先天的な耳の形を変える手術
耳の形は日本小児遺伝学会の 国際基準に基づく小奇形アトラスを見ても非常に多様です。このため標準的な形に戻す方法も多様で、患者さんごとに異なる術式を考え出さなければなりません。
耳介形成手術の技術的側面に関心のある方は、下のリンク先をご覧ください。患者さんばかりでなくこの様な手術に関心のある医師の皆さんにも参考になるような技術的なお話や術中写真なども掲載しています。
術中写真等が表示される場合があります。血液が写り込む場合などは彩度を落とすなど調整をしていますが、血液の写った写真などが苦手な方は用心してご覧ください。
耳介形成手術の基礎(製作中)
特殊な形の耳
特殊な形の耳の例
左端の症例についてはこの下で解説しています。
2番目は軽度の小耳症のように両耳が小さく、軟骨が屏風をたたむように折れていました。この下の項目「耳の大きさの左右差」の欄に詳しく説明しています。
3番目は、次回のてっぺん部分だけが指で押したように反転し、凹凸が逆転しています。この例については編集中です。
右端の症例は、対耳輪の上脚(第2脚)がないのに、過剰な第3脚(スタール耳)によって起こるようなとばり耳変形があるもので、この4例とも教科書や論文等では見かけたことのない特殊な変形です。これについても症例準備中です。
大江橋クリニックではこのほかにも、分類基準に当てはまらない珍しい先天性の変形をたくさん直しています。掲載可能なものに関しては順次症例としてまとめていく予定です。
耳介軟骨の形を操作する手術
何をもって特殊とするか、ですが、〇〇耳、と一般的な(専門用語でない)名前のついている比較的よく見られる変形は省き、通常あまり見かけることのない変形についてまとめてみます。
耳輪、対耳輪、耳甲介などの耳介軟骨の各部分に手を加え、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり一部を削ったりして、耳の形を様々に整えることができます。
複合的な先天異常による複雑に変形した耳の症例
一つの耳介内に生まれつき様々な変形があり、子供の時に手術を受けたが治しきれなかった例です。
手術を受けたのは、当時耳介形成で著名であった関西の某有名大学病院(もっとはっきり言ってしまえば当クリニック院長の出身校である京都大学形成外科)だそうですが、耳垂裂を直したもののあまりきれいな結果にならず、残りの異常も改善できなかったとのこと。
大江橋クリニックでは複数回の手術で少しずつ軟骨を曲げ直したり位置をずらしたりして、正常な形に近づくよう修正しました。
中央の写真は耳たぶ、耳甲介、耳輪脚、耳輪のカーブなどを数回にわたり微調整した後、仕上げ手術を行なった際の術前デザインです。
耳介上部の軟骨が薄く、特に耳輪の立ち上がり部分(点線)がマスクをかけるとゴムの力で折れ曲がってしまい痛いため、付け根の軟骨を一旦切り離し、上にずらして移植し、2枚重ねにして曲がらないよう補強しました。見た目はほとんど変わっていませんが機能的な改善(マスクがかけられるようにする)を目指した手術となりました。微妙な変形や術後瘢痕などがあちらこちらに残っていますが、パッとみた時の印象はかなり改善したと思います。
大学病院形成外科の手術が最善とは限りません。かつての京都大学形成外科は耳の手術では西日本1と言われ、中部地方から九州あたりまでの患者さんを一手に引き受けていましたが、それでもすべての患者さんを満足させることはできませんでした。
今でもいくつかの大学病院形成外科で手術を受けて、不満足な結果に落胆し、大江橋クリニックを受診される患者さんがあります。
耳の症例が少ないため研修医への指導を兼ねた実験的な治療となる施設もあります。
また大手美容外科などでも、耳の経験の少ない医師により軟骨の粗雑な切開を受けてかえって不自然な変形を起こしてしまうことがあります。
一旦不自然に折り曲げられた軟骨は、出来るだけ元の形に戻して平に縫合してから曲げ直しますが、左右非対称に一部を切り取られていたりすると、なかなか自然なカーブを再現することが困難になります。
症例:飛び出した対耳輪を低くする手術
耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)よりもその内側の対耳輪が外に飛び出していて目立つため、対耳輪をやや低くして形を整えました。
近くの病院で立ち耳の手術を受けたが、6時間もかかった上、あまり良い形にはならなかったとのことです。
軟骨の折り畳まれる位置をずらし、一部を削ったりして形を調整しました。上の症例では見た目よりもむしろイヤホンが外れやすいのを修正する目的で軟骨の折れ曲がる位置を耳甲介の内側に移動させ、耳甲介の形を変えてポケットを深くしています。飛び出していた対耳輪はやや平らに矯正されました。
同様の手技で、対耳輪の幅を太くしたり、逆に細くしたりすることも可能です。症状によっては耳介の表裏両方から軟骨を操作しなければならないこともあります。
軟骨膜切開やナイロン糸による矯正など様々な手法を組み合わせます。
例: 耳輪(耳の縁)を太くする、強調する手術
耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)がロール状に巻き込まれている程度は、個人によってほぼゼロから180度以上まで様々です。軟骨の曲がりを調整するのは難しく、軟骨移植が必要となったり、皮膚と軟骨の位置をずらしたりする必要もあります。曲がりのクセが強く、小幅な改善にとどまることもあります。
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巨大な耳・小さな耳
大きい耳を小さく、小さい耳を大きくする手術
耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り小さくする手術を希望する方があります。
大きい耳は軟骨や皮膚を切り取って小さくできますが、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、一部を切り取って重ね合わせたりして形を調整しても、自然さを損なわずに一回り小さくするのは難しく、特に耳の前面に傷跡を残さないようにするにはいろいろな工夫が必要となります。
小さな耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り大きくする手術も不可能ではありませんが、軟骨の量が足りないため移植が必要になります。一般の医療施設では肋軟骨や鼻中隔軟骨を取ってきて移植することが多いようです。しかし耳介軟骨とは性質が異なるためいずれも一長一短です。
できれば同じ側の耳介軟骨の一部を使い、位置を変えたり、一部を切って重ね合わせ、ずらしたりして形を調整したいところです。
しかし、今ある耳の材料(軟骨と皮膚)を使って一回り大きなフレームを作るため、使える材料に限りがあり、小幅な改善にとどまる可能性があります。
皮膚は通常足りないので、耳の裏側の皮膚を動かして表側まで持ってくるか、一部皮膚移植が必要となり、事前に設計図をうまく作っておかないと目的を達成できなくなります。
耳たぶだけを(軟骨を形成しないで)大きくしたり小さくしたりするのは、難易度はやや下がりますが、大きくする場合には材料をどこから持ってくるかが問題となります。詳しくは耳たぶの形を変えるの項をお読みください。
どれくらい大きいと異常と言えるのか
左右で大きさが違う場合はわかりやすいのですが、耳の大きさはもともと個人差が非常に大きいので、どこからが異常かと線を引くのは難しいものです(小さい方も同じです)。経験上、耳の縦径はおよそ6センチ程度を標準にプラスマイナス10%くらいの範囲にあれば異様には見えないと思います。横径は縦径の半分くらいです。一般には女性の方がやや小ぶりなことが多く、耳介の厚みも薄く耳垂(耳たぶ)も小さいことが多いようです・
耳の穴の周囲の凹み(耳甲介)はおよそ2×2センチ程度が標準で、わかりやすい目安で言えば一円玉は入るが五百円玉は入らない程度だと思います。
下の図は小耳症手術では他の追随を許さなかった故・永田先生のサイトから引用しました。永田先生が小耳症の肋軟骨フレームを作る際に、仕上がり寸法の目標とする「正常な耳」の寸法とプロポーションが書かれています。やはり縦方向の大きさは6センチと考えておられたことがわかります。
耳の大きさの左右差
左右の耳の形を揃えたい
極端に小さな耳は小耳症という分類になり、軟骨の移植が必須になります。
小耳症というほどでなければ、あるいは大きな方の耳を小さな方に近づけるというのであれば耳介軟骨形成の考え方で対処できます。
しかし、耳を大きくするため体の他の部分から皮膚や軟骨を採取し移植して皮膚・軟骨の量を増やすには全身麻酔を必要とし、大江橋クリニックではお受けできません。軟骨を動かして耳輪を一回り大きくするなどの手術は行うことができます。
小さい方の耳が異様なほど小さくないのであれば、大きな方の耳の軟骨や皮膚をある程度切除して減量し、形を整えた方が簡単です。
小耳症(二次修正)
小耳症は片側の耳介が極端に小さく、痕跡的であったり位置の異常を伴い、外耳道が欠損している場合もあります。程度は様々ですが国内では毎年数百人程度出生しているのではないかと想像されます。軽症のものは見逃されているかもしれません。通常片側で、両側に発生するのは10万人に一人くらいと稀です。
通常の(やや重症の)タイプではまず自分の肋軟骨を用いた耳介フレームを作成し、耳介の部分に移植します。そのままでは頭に張り付いたような耳になってしまうので、その後二期的に耳起こし(耳介挙上)を行なって耳介の裏側を作成します。
肋軟骨からの軟骨移植を必要とする手術は全身麻酔が必要となり、入院設備のない当院では行えません。小耳症手術を多く行っている札幌医大のサイトには、入院期間は3〜4週間と記載されています。
基本的な小耳症の手術が終わった後の、耳の形の微調整、脱毛、その他の二次的なトラブルは大江橋クリニックでも対応可能です。ご相談ください。
症例: 典型的でない軽症の小耳症
20代男性。生まれつき両耳が小さい。
左の方がやや軽症、時間と費用の制約で今回は右のみを手術し、少し大きくして左に揃える方針とする。
右は軟骨が折りたたまれて癒着し、十分に展開することができない。耳甲介の軟骨を採取し、耳輪の裏側に移植して少し丸みを出す。対耳輪はできる限り膨らみを持たせるが、峰を外側に移動させるだけの強度がない。2月末の受診で就職する4月までに治療を終えたい希望であったため、植皮等はせずできるだけ低侵襲の手術としたが、外見状はほぼ左右対称の大きさに揃った。
上段左から術前、手術時のカルテの略図、1日目、術後1ヶ月。
下段は別角度から見た術前、術後、今回手術しなかった左側。
小耳症には「第一度、第二度」など程度で分類する方法のほか、耳甲介型、耳垂型など主な非欠損部位の名前で分類する方法もあり、典型的なもの以外は通常一人ずつ異なる手術法となります。片方の耳がやや小さい、耳介が折りたたまれている、変形があるなどの軽症の場合は、折り畳まれた軟骨をうまく展開することで不十分ながらある程度の大きさの耳介を作成することができます。様々な事情で入院手術ができない場合などご相談に応じます。
複合的な変形があり一度では改善が難しい場合や、軟骨が小さいものの皮膚は余裕がある場合など、様々な特殊例もご相談ください。
先天性耳垂裂
先天性耳垂裂とは
耳垂裂とは、耳垂(耳たぶ)が丸い形に整わず、2つに避けたように見えるものを言います。正常側に比べて耳たぶ自体も一部が欠損したように小さいものが多いようです。
ピアスホールが拡張して2つにさけるピアス耳垂裂は、ピアスが原因となった二次的なものであり、先天性のものとは治療法が異なります。裂けた部分の皮膚を一部切除するとともにZ形成を行なう事で、かなりの程度まで目立たなくできます。
ピアス耳切れの再建とピアス穴塞ぎ
耳たぶの手術は、耳介軟骨形成を伴う手術に比べると皮膚だけの操作である分難易度は少し下がりますが、組織の欠損が大きかったり複雑な形成を伴う場合は(全層植皮術、皮弁形成術などが加わるため)それなりに時間がかかり難しい手術となります。
耳垂(耳たぶ)の形成手術は軟骨の切開を伴わないので、術後に強い痛みを感じることはあまりありません。安心して手術をお受けください。
症例1:先天性耳垂裂の手術例
耳垂裂というよりは耳垂(耳たぶ)の欠損と言っても良い症例です。上図中央の写真でわかるように、耳たぶのあるべきところに深い穴があいていました。穴を閉じ、耳の裏側に星型の皮弁を作成して耳たぶを作ることにします。右側の手術終了直後の写真で赤く見えるところが深い穴のあったところで、まだ縫合部から出血しています。
下図は左から抜糸直後と1ヶ月目の写真です。まだ赤みが強いですが欠損のない正常側(右の写真)と比較しても大体同じ大きさに揃えることができました。
症例2:先天性耳垂裂の手術例
一見ピアス耳切れのように見えるが生まれつきとのことで、典型的な耳垂裂の症例。割れて見えるのが嫌でずっと接着剤でつけていたが皮膚がかぶれるようになったとのことで受診した。耳介上部もスムーズな丸みがなく、やや小さくて波打っているなど軽度の先天的な変形があるが、そちらは手術するほどではないと希望しなかった。
通常行なうZ形成では対応できない部分欠損を伴い、組織量が少ないので、花弁を開くように皮弁を起こし、組み合わせてW形成術を行った。右はW形成を組み合わせて縫合した抜糸直前の写真。
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耳たぶの形を変える
耳たぶの形を変える手術も行っています。耳たぶを大きくする、小さくする、向きを変えるなど軟骨形成を伴わない手術です。フェイスリフト術後に変形した耳たぶの修正なども含まれます。
大きくするために皮膚と軟骨の位置をずらして耳の裏から足りない皮膚を耳たぶに付け加えたり、特殊な切開で丸く整えて縫合したりします。こうした手術を耳垂形成手術といいます。
症例: 耳たぶを少しだけ大きくする
生まれつき小さく頬についた耳たぶを、頬から離して少しだけ大きくした一例。頬への移行部がフェイスリフトの術後のように下に引きずられたようになっているのをやや丸く修正した。他院では耳たぶへの脂肪移植やヒアルロン酸の注入、シリコンプロテーゼの移植等を勧められたが、耳たぶに異物を入れると感染の可能性からピアスができなくなると言われたため、そうした手術は希望しなかった。
大江橋クリニックでは皮弁術を行なって耳の後ろの皮膚を前にずらす方法でやや大きくした。皮膚をずらすことで塞がったピアス穴は後で同じ場所に開け直した。
小さい耳たぶを大きくするにはヒアルロン酸などのフィラーを注入する治療が一般的です。ある程度大きくすることも可能ですが、液体の注入物での拡大には限界があります。液体は表面張力で丸くなろうとしますし、移動もするため思い通りに形を整えるのは難しく、またあくまで異物ですので感染に弱く、ピアスなどが原因で感染を起こすと切除しない限り炎症が治らないこともあります。予期せぬ副反応や時間経過による吸収という問題も発生します。
シリコンインプラントを埋入する施設もあるようですが、術後にピアスを開けられなくなるなど、美容手術としてはふさわしくないと思われます。 耳の裏から皮弁を作成して表側にずらすことである程度大きな耳たぶを作れます。ただし、裏側の欠損を塞ぐため皮膚移植などが必要となることもあり、裏側の傷も ある程度目立ちます。また、体質によっては術後にケロイドになりやすい場所でもあり、皮弁が拘縮して徐々に小さくなり変形してくることもあるので、長期間のフォローが必要です。
耳たぶを小さくする (症例準備中)
単純に切除すると目立つ場所に傷が残ることもあるので、皮膚をずらしてできるだけ裏側から切除するように工夫しています。その場合、裏側の傷はある程度目立ちます。また、体質によっては術後に肥厚性瘢痕やケロイドが発生し変形してくることもあるので、長期間のフォローが必要です。
症例: 耳たぶの形を変える 頬についた耳→離れた耳
非常に苦労した症例。
頬についた(裾野の長い)耳で厚みもあります。皮弁で後ろの皮膚を回してボリュームを出し、下に裾野を引いた部分は逆に後ろに回して縫い縮めました。
手術そのものは特に問題なかったのですが、術後1日以上出血が止まらず、皮弁は先端が壊死して潰瘍になり、右側は穴が塞がるまで1ヶ月以上かかりました。右が治ってから左側をする予定でしたが、2ヶ月開けて手術することになり、思いの外長期通院となりました。右の治りが非常に遅かったので、左はかなり気をつけて手術したのですが、やはり皮弁が壊死し傷が開いて、治るのに日数がかかりました。喫煙者ではなかったようなので、体質的なものかと思いました。
アトピー症状が強く耳にも術前から皮膚炎があり、好酸球も高値なので皮膚科で内服治療を続けながらの治療でしたが、両側とも皮弁が壊死したのは想定外で、そのため予定したより小ぶりの耳たぶとなり、耳も全体として小さくなってしまいました。
上段左から 術前、術後5日目(裏に潰瘍がありガーゼを当てている)、術後3ヶ月
下段左から 術前、術後1日(固定したガーゼに血が滲んできます)、術後1ヶ月
フェイスリフトなどの美容手術で変形した場合なども、手術によって調整できます。他院の美容手術後の変形を修正したりもしています。
先天性耳瘻管(耳前瘻孔・耳後瘻孔)
症例: 感染を繰り返した両側先天性耳瘻管
症例概要
両側先天性で、初診時両側とも炎症を起こしやや赤みがあった。父親も左側に同じ症状があり過去に治療している。
抗生剤で炎症を軽快させてから、比較的症状の軽い左側を先に手術し、2〜3ヶ月あけて左が完治してから右側を治療することにした。
左の入り口は上下2箇所あり、上側は盲端で潰瘍になっており、下側は複数に枝分かれして一番深いものは外耳道の奥に接していたが交通はなかった。色素で内腔を染めて追跡し全摘した。
アトピーあり顔全体・体にもニキビが多発しているのでその治療も兼ねて術後もマクロライド系抗生剤を長期継続し、2ヶ月後に右側を手術した。右の瘻孔も深く、最深部は外耳道壁まで1ミリであった。どちらも傷は非常にきれいに治り、本人も気にならず他の治療(青色母斑、陥入爪などいずれも後日手術)に移った。
上段左から左側術前、翌日、6日目、5ヶ月目
下段左から 術前、摘出した瘻孔の壁、6日目、術後3ヶ月
先天性耳瘻管は生まれつき耳にある小さな穴で、多くは耳輪の始まり付近に開いた小さな穴(耳前瘻孔)として認められますが、耳の後部(耳後瘻孔)や耳たぶなどに存在することもあります。通常は行き止まり(盲端)になることの多い深い皮膚トンネルで(瘻管)すが、稀には耳の穴(外耳道)の奥の方に繋がっていることもあります。
穴を塞ぐ手術は、大人であれば局所麻酔で対応できます。ただし、穴の壁を残りなく切除するには皮膚を大きく切開する必要があり、通常耳の付け根の前側に数センチの傷跡が残ります(目立つことはあまりないと思います。)過去に感染を起こして何度も腫れたことがある場合は、瘢痕組織が出血しやすく手術操作に時間がかかります。切開範囲は割合大きくなります。皮膚が傷んでいて皮膚ごと摘出しなければならないこともあります。
先天性耳瘻管の二次感染
耳瘻管の中が感染を起こして耳の周囲が赤く腫れて痛む事があります。小学生ぐらいになってたびたび膿が出る、痛むなどのトラブルを起こすことが多く、可能ならば腫れていない時期を選び早めに摘出手術をお勧めします。
重症になると頬や首まで赤みが広がり非常に痛いことがあります。こうした場合まず抗生剤内服で炎症を引かせてから、原因となっている皮膚の管を完全摘出します。
副耳
副耳摘出の例 左から手術当日、翌日、抜糸直後(術後7日目)
30代女性の例。糸で縛って取って欲しいとのご要望でしたが、奥に軟骨の隆起を触れるため全摘出をお勧めしました。抜糸後は傷はほとんど目立たなくなったとのことで受診なく終了となりました。
副耳は耳の前方に小さな硬い隆起として生まれつき存在することが多いのですが、稀に顎や首などかなり下の方に発生する場合もあり、こうしたものは「軟骨母斑」などと呼ばれることもあります。いずれも、皮膚の突起の下には小さな耳介軟骨が存在することが多いです。耳に近いものでは本体の耳介軟骨と繋がっていることもあります。
小さなものは「いぼ」と思われていることもあります。赤ちゃんの時に小児科などで外側の皮膚の部分だけを部分切除されていて、軟骨が皮下に小さく飛び出して触ることもあります。
局所麻酔で摘出しますが耳介軟骨とつながっている場合など思ったより時間がかかることがあります。小学生以下では長時間同じ姿勢を保つことが困難で局所麻酔では摘出できず、入院施設のある病院で全身麻酔が必要なことがあります。通常は手術後、耳の前に線状の細い傷が残ります。目立たず気にならない程度で治る場合がほとんどです。
耳の先天異常を改善する手術に保険は適用されるか
一部の手術については健康保険の適応となります
主に形成外科で扱う手術については、小耳症、耳輪埋没症(いわゆる埋没耳)、先天性耳垂裂、副耳、先天性耳瘻管などを手術する場合には、以下のように保険の対象となることが明記されています。
しかし、立ち耳やスタール耳などの先天性形成異常に関しては、通知に記載されている病名にないので耳介形成手術では保険を適用できません。(むしろわざわざ通知により病名を制限している趣旨は、外見を整える美容的な手術に保険を適用することを禁止する目的と考えるのが適当です。)
(診療報酬点数表に記載されている手術)
医科 > 第2章 特掲診療料 > 第10部 手術 > 第1節 手術料 > 第5款 耳鼻咽喉 > (外耳) >
- K285 耳介血腫開窓術
- K286 外耳道異物除去術
- K287 先天性耳瘻管摘出術
- K288 副耳(介)切除術
- K289 耳茸摘出術
- K290 外耳道骨増生(外骨腫)切除術
- K290-2 外耳道骨腫切除術
- K291 耳介腫瘍摘出術
- K292 外耳道腫瘍摘出術(外耳道真珠腫手術を含む)
- K293 耳介悪性腫瘍手術
- K294 外耳道悪性腫瘍手術(悪性外耳道炎手術を含む)
- K295 耳後瘻孔閉鎖術
- K296 耳介形成手術
通知:耳介形成手術は、耳輪埋没症、耳垂裂等に対して行った場合に算定する
- K297 外耳道形成手術
- K298 外耳道造設術・閉鎖症手術
- K299 小耳症手術
通知:軟骨移植による耳介形成手術においては、軟骨移植に係る費用は、所定点数に含まれ別に算定できない
耳の形を変える手術の多くは健康保険の適応がありません
保険の審査を行う都道府県によっても対応が異なるようですが、特定のいくつかの病名を除き、通常耳介の形を修正する手術は多くの場合健康保険の適応となりません。これは「耳の形」が「耳の機能」と密接な関係になく、「耳の形」の修復が多くの場合「美容的な(見た目の)改善」と見做されるためです。
耳介(外耳)は瞼や鼻、口のように顔の正面にはなくあまり人目を引かないため、社会生活上の「必須の部品」としての地位が低いのです。耳輪埋没症など 健康保険 の対象疾患は主に「眼鏡やマスクをかけるのに不便である」という生活上の不便を伴う機能的な疾患だからという理由で保険適応となっているのだと思われます。
耳介形成手術の治療費について
耳介形成手術の料金表
耳の形を気にして手術を受けようと決心する方は、目や鼻の形を気に病む方と比べて非常に少数です。瞼の手術や鼻の手術に比べると100分の1以下だと思います。患者数の非常に少ない手術なので、実際に多くの手術を行う経験豊富な医師は全国的にも限られます。(多くの美容・形成外科クリニックのサイトでは、メニューにはあっても手術法の紹介は簡単なイラストなどだけで、詳細な手術方法の説明や症例写真は見つからないと思います。)
例えば形成外科学会の専門医はおよそ2,000名ほどいます(2020年頃のデータ)が、小耳症など耳の形成手術を主に扱う「日本耳介再建学会」に出席する医師は例年30〜40人程度しかいません。大学病院の形成外科であっても耳の患者さんが一年に数人以下という施設もあり、手術指導がきちんと行える研修施設は全国でも片手で数えるほどでしょう。
患者さんがお住まいの近くの医療機関で適切な治療を受けられる可能性はかなり少ないと思います。実際、大江橋クリニックには東北や関東甲信越から西日本全域を含む広い範囲から患者さんがおいでになります。東京や名古屋など美容外科医や形成外科医が集中している地方からもたくさん来院します。
近くのお医者さんに相談しても具体的な話がきけない方が多いと思います。このサイトの説明が参考になれば幸いです。
耳の形を変える手術は局所麻酔で行います
立ち耳や耳たぶの形成など比較的難易度の低い手術は、一部の美容外科でも可能なことがあります。副耳や耳瘻管などのありふれた先天的疾患は一般の形成外科でも治療できる医師がいると思います。
しかし、耳輪、対耳輪、耳甲介などの耳介軟骨の各部分に手を加えて適切な場所で曲げたり、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、部分的に削ったりして不自然な耳の形を適切に整える手術(耳介軟骨形成手術)をコンスタントに行っている施設は全国的にも数少ないようです。
大学病院の形成外科などでも、複雑な折れ耳や定型的でないスタール耳など稀な形の異常、柔道耳(花キャベツ状耳)や外傷による部分欠損などの高度な変形、他院術後の修正など高難度の手術をコンスタントに行っている施設は少なく、まして一般の美容外科では、全国展開しているような大手のクリニックでもきちんと対応できないところが大部分であると思います。本当は、他の医療施設との比較をするようなことを書いてはいけないことになっていますが、不適切な手術を受けて困っておられる方も多いので、敢えて一般的な技術水準はかなり低いと申し上げておきます。
大江橋クリニックでは局所麻酔で行える外来手術のみを行なっています。大江橋クリニックは入院設備がないため、定型的な小耳症手術のような肋軟骨移植を必要とする全身麻酔手術や中学生以下の子供の手術は行っていません。耳を大きくする、欠損した部分を補うなどのために耳介以外からの(例えば肋軟骨や鼻中隔軟骨からなどの)軟骨移植が必須となるような手術では、手術箇所が複数となるため通常の局所麻酔で行うことが難しく、他の専門施設ご紹介を含めて相談させていただきます。
入院・全身麻酔を必要とする手術は入院設備の整った病院で治療を受けられることをお勧めします。ただし最近相次いで名人と言える先生が亡くなったり引退されたりして、ご紹介先には苦慮しています。
耳介手術の一般的なリスクについて
耳の形を変えるためには軟骨を削ったり切ったりするため、術後の痛みが一般的な皮膚外科手術や外科処置に伴う痛みに比べて強くなります。当日・翌日はかなり痛いです。徐々に痛みはひきますが、抜糸するころまではさわれば痛い状態が続きます。もちろん痛み止めを飲んでいただきますが、麻酔が切れてくる頃になるとズキズキと痛み、鎮痛薬の内服は欠かせません。
ガーゼを超えて流れてくるほどの出血はまず起こりませんが、滲み出すような出血は丸1日くらいは続きます。翌日のガーゼ交換の際にはまだ止血していない方もいます。血が止まるまでおおよそ24〜48時間くらいかかります。
表面の皮膚が傷んでいると、表皮壊死を起こしてビランや潰瘍になることがあります。通常は穴が開くほどのことはありませんが、しばらく処置が必要です。上皮化には2週間くらいかかることもあり、まれには軟骨が露出して皮膚移植などが必要になることがあります。
局所麻酔や手術操作に伴う腫れは、おおむね1〜2週間で目立たなくなることが多いものですが、体質等により適切な術後治療を行っても数ヶ月から1年程度に及ぶことがあります。皮膚の赤みは3ヶ月程度は続きます。アレルギー体質など腫れやすい方は、半年くらい耳全体が厚みを持って腫れます。腫れが引いてくると萎んでシワが寄ってくることもあります。また内部を縫った糸の結び目が目立ってきたり、露出して抜糸することもあります。まれには糸が緩んで軟骨が変形してきたり、いわゆる後戻りして手術の効果が減弱する場合があります。
通院が不要になるまで、通常3ヶ月程度の間に5〜10回程度診察させていただきます。(経過が順調であれば少なくなります。)腫れが長引く等順調でない場合はテーピングや内服、レーザー治療などを長期間継続していただくことがあります。標準的な経過であれば特別な追加治療は必要としません。
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耳介形成手術の特殊性について
耳の形に正解はありません
耳(耳介、外耳)の形は個人によってばらつきが大きくおおよその形の目安はあるもののどこまでが「正しい耳の形」かと言えるような明確な基準はありません。(上のイメージ写真はそれぞれに形は違いますが、どれも正常な耳です。)
しかし、人それぞれに美しく見える耳のイメージはあります。耳の形は目や鼻などに比べ人目を引くことが少ないものの、個性を引き立て魅力的に見せる重要なパーツです。
耳の形の修正は耳鼻科では扱いません
耳(耳介、外耳)の形は、けがや病気、また生まれつきによって様々な変形やトラブルを起こすことがあります。しかし、通常の耳鼻科診療は「耳の聞こえ」を主に扱うため形についてはあまり関心を払っていません。
眼科領域では最近目の形(見た目)を中心に扱う「眼形成」という分野が発達し、専門として治療にあたる医師や施設も見られるようになりましたが、耳介に関しては、形の治療は主に形成外科が担当しています。治療法は主に手術になります。
耳の形を変えるには、皮膚だけでなくその下の耳介軟骨という土台の形を変えなければなりません。軟骨は骨と異なりメスやハサミで切ることもでき、ナイロン糸などの手術用の糸で縫うこともできます。(小耳症などではステンレス・ワイヤーを使うこともあります。)しかし、再生力が弱く、皮膚のように縫っておいておけば速やかにくっついて欠損が塞がる、といったことはなく、長期間(通常は数ヶ月以上)固定して接着剤にあたるコラーゲンが固まるのを待たなければなりません。治癒に要する期間は骨折が治るより長くかかることがあります。
耳介軟骨の特殊性について
耳介軟骨は弾性軟骨といって硝子軟骨(肋軟骨や関節軟骨、鼻の軟骨など)や線維軟骨(顎関節や半月板など)とは違う特殊な性質があり、この性質を持つ軟骨は他には耳の奥の耳管と喉の奥にある喉頭蓋軟骨だけです。 柔らかくて弾力があり、元の形に戻ろうとする性質が非常に強いため力で曲げても後戻りしやすく、戻らないように曲げるには、この性質に対する知識と「コツ」が必要です。
下記のページでは、耳の軟骨を綺麗に曲げるためにどのような工夫をしているか、基礎から分かりやすく解説しています。
耳介形成手術の基礎(製作中)
手術の手順と術後のケア
耳介形成手術:手術法について(軟骨形成を行なう場合)
- 手術台に仰向けになり、耳の消毒をし、耳の部分だけ丸い穴の開いたシーツをかけます
- 両側の場合、片方ずつ(通常は右から)計測してインクで印を付けます
- 印を付けた部分に皮膚の表面から麻酔の注射をします
- 耳の輪郭部分を切開して、軟骨と皮膚の間を剥離します
- 露出した軟骨に浅く切開を入れて癖をつけていきます
- 必要であれば軟骨を切除したり、位置を変えて他の場所に移植します
- 軟骨を縫い合わせて耳介のフレームを作成します
- 皮膚を被せ、ナイロン糸とスポンジなどででポイントを縫い合わせて行きます
- 切開した皮膚の表面を細い糸で縫い合わせます
- 隙間ができないようにスポンジやガーゼで耳の両面をパッキングします
術後の経過とケアについて
- 手術当日は患部を濡らせないので髪は洗えません
- 通常は翌日の診察で出血していない事を確認します
- できるだけ早く洗髪できるように配慮します(通常最初の術後診察後)
- お渡しする内服薬は必ずすべて飲みきってください
- 1週間以内に2回目の診察を受けて異常ない事を確認させてください
- 通常は1週間目〜10日目頃に糸を抜きます
- 腫れや傷跡の赤みは人により数ヶ月続く場合があります
- タバコは傷の治りを極端に遅らせますのでお勧めしません
- 食事の制限はありませんがアルコールは控えてください