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耳の悩みと治療
〜 Ear and Earlobe 〜

耳の写真

大江橋クリニックでは 耳の形の治療ができます

  • 耳とその周囲のトラブルに関して様々なご相談をお受けしています
  • 外耳(耳介や耳垂)や耳周囲の皮膚と耳介軟骨を治療の対象とします
  • 耳の聞こえ方(聴力)や耳の穴の内部は耳鼻科の領域です

変形した耳の形を修正する手術

いわゆる柔道耳は外傷を契機として変形するため、受傷の位置や頻度、出血の程度などにより形は様々で、一定の手術様式がありません。多くはバラバラに壊れた軟骨をできるだけ元の位置に整復しながら増殖した部分は切り取り、欠損した部分には切除した軟骨の一部を移植することにより形成します。難易度の高い手術となります。

ICD10分類 : M00-M99 筋骨格系及び結合組織の疾患 > M95-M99 筋骨格系及び結合組織のその他の障害 > M95 筋骨格系及び結合組織のその他の後天性変形 > M95.1 花キャベツ状耳

Cauliflower-ear deformity(カリフラワー耳)は,ICD-10分類上の正式病名を「花甘藍(きゃべつ)状耳」と言いますが、別名柔道耳,相撲耳(力士耳)、レスラー耳( wrestler’s ear)などともいわれ,形状から俗に餃子(ギョウザ)耳などとも呼ばれます。
上記の格闘技のほかラグビーなどの球技や事故、暴行などによる外傷、膠原病や血液疾患、飲酒後などに硬い床で寝る習慣などでも生じ、また特に誘因のはっきりしないものやアトピー性皮膚炎による掻爬に続発するもの(カリフラワー耳を生じたアトピー性皮膚炎症例の1例 角ら 耳鼻咽喉 72-12:839-842 2000)などもあります。
アトピー性皮膚炎によって起こったと思われる症例は、大江橋クリニックでも数人経験しています。その多くは正常に治癒しなかった耳介偽嚢腫に続発したものと考えています。

花キャベツについて

カリフラワー↓ 葉牡丹(ハボタン)↓  写真はWikipediaより引用

カリフラワー 葉牡丹

花キャベツはカリフラワーのことです
最近園芸関係のネットを中心に「花キャベツ」を葉牡丹の別名として紹介している記述が見られます。葉牡丹の英名が"flowering cabbage"であることからくる誤解と思われます。葉牡丹と日本名花キャベツ(カリフラワー)は別種です。カリフラワーはドイツ語で "Blumenkohl"(花キャベツ)といい、医学用語はドイツ語由来なので、カリフラワー状に変形したいわゆる柔道耳は「花キャベツ状耳」というのが正式病名です。

反復する外傷により,軟骨膜と軟骨との間、または軟骨の割れ目を介して軟骨内の間隙に出血が繰り返され(耳介血腫)、炎症を起こしてその部分が徐々に線維化,瘢痕化,石灰化などするために、軟骨そのものも破壊と修復を繰り返して、細かく割れては盛り上がり複雑な変形が生じます。また私見ですが、体質的な原因によると思われる皮膚の肥厚性瘢痕もそれに加わって分厚い結合組織が軟骨を覆います。
硬くなって「柔道耳」化したものは形成外科的手術で軟骨や石灰化した瘢痕を切除しなければ治すことはできません。出血や打撲を繰り返したものでは見た目の軟骨の変形がわずかであっても、厚さが増し硬さが残り、圧迫すると痛みが生じるため寝返りが打てないなどの自覚症状が長年続くことがあります。

大江橋クリニックでは、耳介軟骨形成の手術は平日午後の手術時間に行っています。柔道耳の場合、皮膚からのアプローチで軟骨を綺麗に露出するまでに時間がかかることが多く、手術終了まで3時間以上かかることもあります。軟骨を彫刻して耳の形を削り出していくような手術になります。
予約日は通常1ヶ月程度先になります。近年健康保険の査定事例が増加し、柔道耳に関しては保険の支払いを拒否されるようになりました。そのため大江橋クリニックでは柔道耳の再建手術は自費で行います。ご了承ください。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。軟骨を削る手術はどうしても術後に痛みが出ます。鎮痛剤を処方しますが、当日翌日は触らなくても痛いです。痛みは日毎に少なくなります。
通常1週間後に抜糸、傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

※ 柔道耳の手術は、難しい

柔道耳の手術は、一言で言って難しいです。それは、手術直後は綺麗になったと思っていても、腫れが引いていくと徐々に変形してくることがあるからです。
耳の肥厚性瘢痕に関してはあまり資料がありませんが、体質的な原因が主体だと思っています。そもそも柔道耳になってしまうこと自体が、体質的なものかもしれません。
通常腫れが引いていく頃になって赤みが増し、腫れぼったく厚みも出てくる人がいます。数ヶ月経ってようやく赤みと腫れが引いてくると、ずっと腫れていた皮膚がしぼんで予期せぬところにシワが出てきたりして、予定の形になってくれません。手術を試験に例えると、100点取ろうと思って頑張るのですが出来上がりが80点の人も60点の人も出てきてしまいます。
様々な工夫で良い成績を目指していますが、今のところそれが現状であることを告白しておきます。
以下の症例もそうした観点から選んでいます。

症例1 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約15年前の症例です。25年前から放置していた40代男性の柔道耳の例。耳輪が折れてΣ型になり横方向に縮んで細くなってしまった。対耳輪は複雑な形状に変形して耳甲介を塞いでいる。手術に際しては、複雑に凸凹している皮膚を一定の厚さで剥離して皮弁にし平らに伸ばせるかが勝負になる。

バラバラに砕け変形して重なり合っている軟骨を慎重に外し、削って形を整えてから位置を変えて縫合していく。

左は手術中に仮に皮弁を戻してみたところ。幅が少し広がり耳輪の丸みも出てきた。もう少し微調整してから切開したところを縫合する予定。

1週間目に皮弁を固定しているボルスター固定を外すと、皮弁は表皮が壊死してびらんしていたが、軟膏治療等で回復は見込める範囲。耳甲介の窪みと耳輪の丸みがうまく表現できていないが、ご本人もこれくらいならと了承いただける範囲。希望があれば再手術可能であることを伝える。

中央の術後1ヶ月の写真では、耳の厚さは手術直後の半分くらいになりいく分腫れが引いてきたことがわかる。左の術前と比べると改善はしているが、耳甲介の深さや対耳輪の輪郭がはっきりしていない。右の手術していない方の耳の写真と比較すると、まだ耳の厚みは倍くらいあり、今後数ヶ月かけて腫れが引くともう少しシャープに輪郭が出てくると思われるが、1ヶ月目でこれくらい腫れているのは仕方がない。以後の通院がなく最終的な結果は不明。

症例2 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約14年前の症例。柔道耳に対し、初診の10年ほど前に大阪大学で耳介形成手術を受けたが、満足な結果にならなかったとのことで受診したとのこと。右の2枚の写真は手術当日のもので、耳輪が波打っていて厚みも不揃いである。おそらく術後の経過で変形が進んだものと思われ、再手術に際しても注意が必要。

手術中の写真左は耳輪軟骨が一部欠損し、波打つように変形していることがわかる。変形を矯正して、中央の写真のようにしっかりとボルスター縫合で固定する。左の写真は抜糸直後で、上側の不自然な膨らみはだいぶ改善したように見える。

しかし術後2ヶ月半経ってもなかなか腫れが引かず、左の初診時の写真と比べても軽度の改善にとどまっている。右の写真の正常な右耳と比べると耳全体の厚みも倍くらいある。腫れが引くのを待っているうちに受診が途絶え、この方も最終的な経過は不明。このように柔道耳の場合、術後の腫れ(肥厚性瘢痕)が非常に長引くケースが多く、最終結果(2年くらいかかることもある)を追えないで治療終了してしまうことも治療を難しくしている。

症例3 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約8年前の症例。50代男性。学生時代に柔道耳になったが、結婚することになり改善したくなった。変形が激しく内部構造はさておき耳輪を丸くすることを目指す。軟骨はバラバラになっていることが予想され表面の皮膚もかなり凸凹している。

術前のデザインの最大の問題は、術後に耳輪となる皮膚の内側に来るように切開線を設定すること、2番目の問題は耳輪と対耳輪の軟骨をどこから採取するかである。右の手術中の写真を見ると耳輪軟骨が何枚にも分かれてバラバラになっている。これらの軟骨を一度耳から取り出し、耳の形になるように組んで移植するので、テクニックとしてはあらかじめ材料が確保してある小耳症よりも難易度が高い。

皮弁は厚みが不均一でしっかりボルスター固定しないと浮き上がって血腫になり壊死してしまう。1週間目に外すと表皮壊死になってしまっていたが、この程度であればきちんと治療すれば治ってくれる。右の写真は中央の写真の10日後だが、まだ一部ビランが残りテーピングしてカバーしている。

ちょうど術後1ヶ月目の写真。かなり腫れているが術前と比較するとだいぶ改善している。

術後6ヶ月目の写真。腫れが引いて、瘢痕が縮み皮膚に皺が寄ってきてしまった。修正するなら大掛かりなことをせずシワのよった皮膚をぬい縮めるなどしてより自然にできると提案するが、イヤホンが入るようになり形もある程度改善したのでもう良いということで終了となった。

耳介血腫

打撲やスポーツなどの強い衝撃を契機として、刺激によって耳介軟骨と軟骨膜の間に出血すると、軟骨膜の内部に血が溜まり軟骨も変形して膨れてくる事があります。軟骨の中には血管がないため、基本的に軟骨の内部に出血することはありません。軟骨膜が内側から圧迫されて強い痛みを生じます。

きわめて早期であれば、内部の血液を抜き、麻酔の注射をして裏と表からキルティングのように糸で縫い合わせる事で元に戻すことができます。(この治療法は保険適応の項目がありません。溜まった血を抜く処置しか明示的に認められていません。)
圧迫しておく期間は最低2〜3週間は必要です。時々、耳鼻科のお医者さんに指で押さえておけといわれた、とか、スポンジをテープで止めて明日まで外すなと言われた、とかいう患者さんがいるのですが、そんなに短時間でくっついてしまうような簡単なものではありません。縫合しない場合、何度も再発することが少なくありません。

再び血が溜まらないように皮膚と軟骨膜の一部を切除して穴を開けておく事も有効な手段ですが、血が流出してくるためガーゼを当てるなど術後の処置が煩わしいことが多く、また通常比較的目立つ傷が残ります。(これは保険適応があります。耳介血腫開窓術)

時間が経ってしまった場合

ある程度時間が経つと、血液の細胞成分が破壊吸収されるとともに、瘢痕化して軟骨膜の直下に新たに薄い軟骨ができ、永続的なカプセルが形成されて中に体液がたまった状態が続き、「嚢腫(袋のできもの)」のように安定化してしまいます。膨らんだ前面の軟骨をきれいに切除することが治療の決め手になります。

更に内部の軟骨細胞が増殖して塊状の軟骨を形成し、いわゆる柔道耳のように変形することもあります。こうなると、軟骨の一部を切除して形よく削りなおし、耳の形を再建する必要も出てきます。
このような場合、診療報酬規定に明示的な記載がないため耳介形成手術として保険適応が認められるかどうかはわかりません。(今までは詳細なコメントをつけることにより保険適応が認められた場合が多いのですが、最近は保険組合から支払いを拒否される例も出始めています。今後は耳介形成術は自費と考えていただいた方が良いと思います。)

手術例(2枚に分かれた表側の軟骨を切除して皮膚を戻し、完治した)

耳介偽嚢腫

耳介血腫と似た疾患に「耳介偽嚢腫」があります。臨床の現場では、耳介血腫と区別されずに治療されていることが多いようです。しばしば混同されて記述がちぐはぐになっていることがあり、耳鼻科医のサイトや医療専門のサイトでも両者を区別しないためわかりにくくなっている場合があります。

治療法は耳介血腫と同様ですが、圧迫だけで分裂した軟骨が接着することはまずなく、変形した軟骨を切除する手術が必要です。

手術例(上記と同様の手術、右は抜糸直後でまだ腫れて赤みがある)

耳介偽嚢腫は1966年にEngel D.が世界で初めて報告したもので(Pseudocysts of the auricle in Chinese. Arch. Otolaryngol. 83:197-202 1966)、日本では1987年に小宗らによって初めて報告されました(耳鼻と臨床 33:789-791 1987)。特にはっきりした外傷の既往がなくても起こり、いわば突然耳が腫れてくるもので、内容液も血液ではなく黄色調透明ないわゆるリンパ液です。無痛性のことが多いようです。更に内部の細胞が増殖して不完全な軟骨を形成し、いわゆる柔道耳のように軟骨の塊を形成することもあります。(下の柔道耳参照)
軟骨細胞から放出されるLDH4, LDH5, IL-1, IL-6 などにより、慢性の炎症による軟骨破壊と軟骨増生が同時に起こり軟骨内に隙間ができる(intracartilagenous space formation)ことが誘因になるという説があります。表と裏の2枚に軟骨が剥がれてその間に液体が溜まるのが特徴です。
耳の軟骨は成長に伴い前葉と後葉の二枚の軟骨膜の間に複雑な形が形成され、実際には一枚の板状の軟骨ですが、耳介偽嚢腫などの手術をしていると、まるで耳介軟骨がもともと2枚あるかのようにきれいに表裏2枚に分かれた軟骨の間にリンパ液が溜まっていることがよくあります。そのサンドイッチ状の軟骨の周囲をぴったりとラップしたように丈夫な軟骨膜が覆っています。

※ 耳介軟骨炎・軟骨膜炎

耳介血腫や耳介偽嚢腫に続発して、感染などを契機に強い炎症が起こり、軟骨が溶けて吸収されてしまうことがあります。軟骨膜炎そのものは強力な抗生物質や消炎剤を投与することで収まりますが、軟骨内に血管が無いことや細菌と白血球の戦いの場となる結合組織が貧弱であることなどから、治癒するまでに時間を要し、その間に軟骨が高度に変形することがあります。

変形した耳介軟骨は切除したり削ったりして形を整えますが、軟骨移植術が必要になることもあります。

耳介軟骨膜炎の例

以下の症例は血腫などに続発したものではありませんが、軟骨膜炎で軟骨が溶けて吸収されてしまった例です。軟骨ピアスを開けたが化膿して、何度も膿を抜いているうちに変形したということです。

この症例では崩れて溶け残った耳介軟骨を切除し、位置をずらし移植して形を整えましたが、支える力が不足してやや後戻りしてしまいました。

外傷性瘢痕変形(両耳修正のうち右耳)術後1ヶ月

打撲により耳介血腫となった場合は、耳介血腫と同様な方法で治療ができますが、稀に虐待や職業性の繰り返す外傷によって軟骨がバラバラに折れたり砕けてしまい、いわゆる柔道耳よりもさらに高度に変形してしまうことがあります。
柔道耳の治療と同様に治療しますが、折れた軟骨を丁寧に剥離して元に戻すことが可能であれば、比較的高度な変形でもなんとか耳の形態を改善することができます。不幸にして挫滅が強かったり新たに軟骨が増成している場合、削った軟骨のみでは材料が不足し、同じ側か反対側の耳から耳介軟骨の一部を切り取ってきて移植しなければならないことがあります。

こうした軟骨移植に対し保険適応が認められ耳介形成術と合わせて算定することが可能であった症例も過去にあります。保険適用可能な場合、耳介形成術+軟骨移植術+皮弁作成術(全層植皮術)で11〜15万円の自己負担になります。しかし他の項目でも述べたように、近年保険適応は厳しく制限される傾向にあり、特に怪我の原因が事故や他者によるものの場合などはほぼ不可能になりました。今後は後天性の原因による耳介形成術全般を自費手術とさせていただく方向です。ご了承ください。

症例

ケガをした直後、あまり日をおかずに受診された患者さんの例としてあげました。半年後に腫れが引いて軟骨の変形が固まった後に手術し、改善が見られた例として掲載しました。

実際には次のような経過をとりました。上図左が初診時、まだ内出血もあり痛みも引いていません。家族の男性に大きな固い本の表紙で殴られたとのことでした。下図左端は受傷後2週間でまだ赤みがありますが、痛みは無くなってきています。
2枚目は3ヶ月目、3枚目は受傷後約半年、ようやく腫れも引き変形も改善してきたかに見えました。(その間、腫れを引かせる内服薬等で治療を続けています。)
しかしその後、瘢痕が拘縮し(縮み)耳甲介が狭くなり硬さも増してきました。軟骨が増殖してきたようです。

そこで受傷後7ヶ月を過ぎた頃に手術を行いました。
下図左端は耳の裏側にも固い軟骨が突き出していることを示しています。この軟骨は裏側から切除します。2枚目は耳甲介の軟骨を切除した後にガーゼを詰めて縫合したところです。
3枚目は1週間後にガーゼを除去したところです。耳甲介の切開創はナイロン糸で縫合してあり、まだ抜糸していません。写真を拡大すると糸が見えると思います。右端が手術後3ヶ月の写真です。ようやく腫れも引き変形も改善しました。上の術後写真は更にその1ヶ月後です。おそらく赤みが引くのにはまだ数ヶ月かかると思いますが、本人の希望もありこれで治療を終了しています。

症例

柔道耳 柔道耳 柔道耳

左:発達障害あり作業所の仲間に5年間暴行を受けて変形した耳

<編集中>

他院で行なった耳介手術の修正は原則として自費ですが、症状や事情によっては保険が適用される場合もありますのでご相談ください。
耳介軟骨形成を伴う耳介形成手術は、自費の場合通常片側330,000円(税込)となります。他院で行った立ち耳手術などの修正を行う場合、前回の手術で行われた軟骨の切開や縫合などを元に戻すため様々な処置を行い、その後に改めて正常な形に近づける処置を追加するため非常に時間もかかり困難な手術となります。こうした場合は片側の手術料を自費550,000円程度に設定しています。実際の料金は難易度により変更することがあります。ご相談ください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

厚生労働省近畿厚生局や健康保険審査機関に問い合わせて確認したところ、ピアスによる耳切れの手術に健康保険を適用する事はできないとの返事をいただいております。
大江橋クリニックではピアスによる耳切れの手術に関してはすべて自費治療とさせていただいております。

ピアスによる耳切れは「耳垂裂」(先天性のもの)には含まれません

健康保険上の「耳介形成手術(耳介軟骨形成を伴わないもの)」に規定されている耳垂裂とは先天性のものに限られます。したがってピアス耳切れの手術は通常自費となります。

  • ピアスによる耳切れは、次第に縦長になっていたピアスホールの端が徐々にちぎれそうに細くなり、ある日気づくと切れていた、ということがほとんどです。
  • 切れた時には痛みもなく出血もないのが普通です。外力(暴力等)によって引きちぎられることは滅多にありません。
  • 徐々にピアスの下側の皮膚が溶けては治っていくため、切れた断面は皮膚が張っていても傷跡の組織に置き換わっています。
  • 平らに見えても断面は丸みを帯びているため、そのまま縫い合わせても傷は綺麗になりません。耳たぶを元の丸い形に戻すのは簡単ではありませんが、切開のデザインを工夫することにより、丸い耳たぶを作ります。ケロイド体質の方を除き、傷痕もあまり目立たなくなります。
  • 通常は、傷跡の組織を切除し、周囲の皮膚をジグザグに切って皮弁を組み合わせ、形を整えて縫い合わせる必要があります。

一般的には傷の治療を優先し、ピアスホールを残すことはできません。完全に治ってから希望があれば新たに開けなおすことになります。

ピアス穴は前後に2つある

ピアスホールを閉じる手術を行っています。小さな穴ですが、手術に際しては前後にある穴の間をつないでいる薄い皮膚のトンネルを残さず摘出する必要があり、意外に難しい手術です。

  • 出来るだけ小さい傷で納めるため、通常は直径2ミリほどのパンチを使います
  • 穴の入り口が変形したりへこんだりしている場合、平らに戻すか、平らでない部分を切り取る必要があります
  • 細い皮膚トンネルを覆っているチューブ状の皮膚を残さず取り出す必要があります
  • 耳が変形しないよう、耳の表裏で縫合する方向を変える必要があります
  • あとで手術の傷の近くにピアスを開け直すことを考え、傷の影響が及ばないように治す必要があります
  • 万一表面が平らにならなかった場合、ヒアルロン酸などを注入して平らにするか再手術するか検討する必要があります

ピアスホールを閉じる手術。小さな穴にガイドの針やブジーをガイドとして通し、それに沿わせて2ミリパンチで前後にある穴の間をつないでいる薄い皮膚のトンネルを残さず摘出する。取り残しがあると耳の中に皮膚の島が取り残されて粉瘤のような腫瘤を生じる。

拡張したピアス穴は、切除方法も変わってくる

バーベルなどで拡張したり、トラブルで縦に長く伸びたピアス穴などは通常の方法では治せません。特に拡張したものは、周囲の皮膚も引き伸ばされて傷み、正常な皮膚とは伸び縮みの特性も異なっているため、そのまま縫い合わせても平らには戻りません。表と裏で別々にZ形成術やその他の皮弁術を行いますが、術後に傷が変形して縫合部がへこんだりすることがあります。

以前はピアスホールを残したまま一部を切り取って穴を縮小する手術を行っていましたが、創部にシリコンチューブなどを留置しておく必要があり、一度感染を起こすと抜かない限り治癒せず治療に難渋することがあります。このため現在では、一度完全に塞いでから開け治すことをおすすめしています。

ピアスホールの穴ふさぎは通常自費で行なっています。今のところ塞ぐ数によって費用を計算していますが、難易度や大きさによって決めることもあります。拡張したものや切れたもの(切れそうなものも含む)は別の料金体系としています。
予約日は通常1ヶ月程度先になります。予約金11,000円を頂戴しています。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。凹みや変形に関しては目立たないよう努力しますが、術後には何らかの「傷跡が残る」ことはご了承いただきます。

先天的な耳の形を変える手術

立ち耳の手術は自費になります。これは大江橋クリニックの方針というわけではなく、厚生労働省の見解(単なるたち耳の矯正手術は見た目を改善する美容手術であり健康保険の適応外)に従ったものです。立ち耳修正では、耳介上部の軟骨に裏から3本ほど切開を入れ折り曲げて後ろに寝かせる方法が主流ですが、その方法では自然な形にはなりません。耳介の形は人により、また左右により違うため、左右それぞれの耳を別々の方向から見たときより自然に見えるよう努力しています。標準的な手術法では対耳輪の微妙なカーブを繊細に表現できないため、少々手間はかかるものの後戻りの少ない方法を工夫しています。

立ち耳手術の一例

【参考】
様々なクリニックで行われている立ち耳の手術の術後結果の例。一般的な医療水準を理解してもらう目的なので、他院を貶める意図は無く引用元は明示しません。いずれも「軟骨を折って裏から縫合する」術式と想像されますが、そのため対耳輪が細く折れて鋭く直線的になってしまっています。

一方、下に示したのは右から、耳を失った人が装着する偽耳(エピテーゼ)の例、ピアス展示用に作られた耳のマネキンの例、ネット上に挙げられている正常と思われる耳の写真の一例、大江橋クリニックで行った立ち耳手術の術後写真(この上に挙げた症例)です。いずれも対耳輪がある程度太く柔らかい曲面でできていることがわかります。

耳の形に正解はなく、人によって形は様々ですが、耳介軟骨は一般にごく一部(対耳輪第1脚が耳輪の中に隠れていく部分など)を除いて鋭く折れたところがなくなだらかな曲面で構成されています。この柔らかなカーブを保つために大江橋クリニックでは様々な工夫をしています。

上記症例の詳細。片側の立ち耳。対耳輪の縦方向の曲がりが少ないだけでなく、耳の中央あたりが不自然に凹み、左側の正常な耳とはずいぶん形が異なっています。一般的に美容外科や形成外科で行われているような、耳の上方を後ろに折り曲げるだけの手術では改善できません。軟骨を自然に曲げるため一旦前面の皮膚を取り除いて軟骨に細かく浅い筋を入れて行きます。手術時間は片耳で1時間半〜2時間くらいかかります。こうした手術は自費になります。

お問い合わせが多いご相談ですが、その多くは「立ち耳の手術を保険でやっているか」というものです。残念ながら上に書いた通り現在のところいわゆる「立ち耳の手術」(立っている耳を後ろに寝かせる手術)には保険を適用することができません。

他の医療施設では保険で行っているとの情報は多々耳にしますが、その場合は何か別の病名を便宜的につけて保険適応としているものと思われます。医師の好意とはいえ「診療報酬の付け替え請求(本来保険請求できない処置を、別の病名や手術名に付け替えて請求する)」という違法行為の疑いもあります。
保険の審査は地域格差があり、審査する市町村や担当医師によっては保険請求が通るのかもしれませんが、少なくとも当地では難しいようです。
保険でやっている医療機関を教えて欲しいという問い合わせもいただきますが、上記のようにもし行っているとしても個々の医師がこっそりと患者さんに便宜を図っているものと思われますので詳細を書くことはできません。

厚生労働省近畿厚生局や健康保険審査機関に問い合わせて確認し、単なる立ち耳の手術に健康保険を適用する事はできないとの返事を明確にいただいております。
大江橋クリニックでは立ち耳の手術に関してはすべて自費治療とさせていただいております。

本当に立ち耳ですか?

ただし、患者さんの耳の状態が本当に単なる「立ち耳」なのか、は診察を受けていただかないとわかりません。

耳介(外耳)の形には多くのバリエーションがあり、一見立ち耳のように見えても、スタール耳を代表としていわゆる先天性耳介形成異常として扱える場合もあるからです。できれば一度診察を受けてみてください。診断をつけるための診察であれば自費診察料(税込5,500円)のみです。

立ち耳等の手術が健康保険の適応にならない理由

日本を含むアジア諸国では、文化的社会的に耳の形に関しては許容度が高く、立ち耳に関しても、特に子供の頃には「ミッキーマウスのよう」「おさるさんのよう」などと、むしろ「かわいらしい」「愛らしい」ものとして愛される傾向があります。
ヨーロッパでは人間と動物を明確に区別する宗教観から、動物の耳に似ていることは社会生活上著しい不利益を被りますが、日本で生活している限り耳の形が風変わりであるからといってそのようなことにはなりません。

最近ではヨーロッパ的な習慣が広まり、またピアスを着用する際に美しく見えないなどの理由から手術を希望する方が増えましたが、一般に社会生活上著しい不都合があるとは考えられないため、通常は耳介の形の異常は健康保険の対象となりません。
大江橋クリニックで行っている立ち耳の手術法に関しては、立ち耳の手術(PC版解説ページ)にも説明があります。興味のある方はご覧ください。

スタール耳、その他の特殊な耳介変形の場合は「単なる」立ち耳とは言えませんが、今のところ保険適応可能という明確な規定は存在せず、場合によるとしか言えません。

立ち耳の手術のPC版解説ページ

他院の美容手術で変形した場合など

立ち耳の手術などは様々な術式があり、時には軟骨を折りたたむ場所が不適切だったり、左右で異なっていたり、特殊な手術でかえって変形したりといったことが起こります。

耳の写真

☜ Googleによりショッキングなコンテンツとの指摘がありましたので、以前より更に彩度を落として掲載しています。

大江橋クリニックでは、まずできるだけ手術前の状態を復元し、折れた場合は平らに戻したり固定した糸を外したりしてから、自然にカーブさせる位置を探します。

軟骨は折り曲げるのではなく、木の枝を矯めるように柔らかく矯正することが大切ですが、そうした技術を持つクリニックは少ないようです。

耳介軟骨の再修正は自費になります。いったん元に戻してから再度曲げるという、時間のかかる手術になる関係上、基本的には通常の耳介軟骨修正料金の概ね50%増しになります。さらに軟骨移植が必要であったり、特殊な手技を必要とする場合はもう少し高額になる場合があります。

スタール耳の手術例

下の写真はスタール耳に似た変形の症例です。左から初診時、手術直前、術後1日目、術後13日目(全抜糸時)のものです。
抜糸後受診なく、術後長期成績は不明です。

スタール耳の手術は、健康保険で行う施設もあるようですが、健康保険に規定はありません。スタール耳の形状は様々ですが、一応の基準は通常は二股に分かれている対耳輪が三又に分かれて第3脚が存在することです。この第3脚がしっかり折り畳まれていると先端が尖った、上の症例のような形になります。
この尖った部分は皮膚が非常に薄く、軟骨としっかりと接着しているため、はがすと穴があいてしまうこともあります。まず軟骨の形を修正してから、その上に皮膚をかぶせて丸い耳輪を作りますが、必ずしもきれいに丸く作れるとは限らず難しい手術の一つです。

  • 第3脚がくっきり折り畳まれておらず緩いカーブを描いているような時には、全体として立ち耳のように見えることがあります。しかし一般的な立ち耳の手術できれいなカーブを作ることが難しく、かえって変形してしまうこともあります。
  • いわゆる立ち耳(対耳輪の折り込みが不足して舟状窩が浅く広くなっているような耳)を「スタール耳」と病名をつけて健康保険で治療している医療機関もあるようですが、そのような事例が続くと本当のスタール耳の方の手術が「立ち耳手術」と誤解される恐れがあるため、やめてもらいたいと思っています。
  • スタール耳の手術は軟骨の形を整える際に表側と裏側の両側から曲げていく必要があるため、時間のかかる手術になります。

耳介形成手術(耳介軟骨形成を要しないもの)

先天性耳垂裂は健康保険適応が認められています。
上記の耳介軟骨形成を伴う埋没耳に比べると難易度は下がりますが、複雑な形成を伴う場合は(全層植皮術、皮弁形成術などが加わるため)それなりに時間がかかります。

耳垂(耳たぶ)の形成手術の場合、通常局所麻酔のみで手術を行います。
軟骨形成を伴わない場合、術後に強い痛みを感じることはあまりありません。安心して手術をお受けください。

ピアスホールが拡張して2つにさけるピアス耳垂裂は、ピアスが原因となった二次的なものであり、外傷(暴力など)によって裂けたものでもないため健康保険の対象とはなりません。

先天性耳垂裂の手術例1

耳垂裂というよりは耳垂(耳たぶ)の欠損と言える症例です。上図中央の写真でわかるように、耳たぶのあるべきところに深い穴があいていました。穴を閉じ、耳の裏側に星型の皮弁を作成して耳たぶを作ることにします。右側の写真で赤く見えるところが穴のあったところで、縫合部から出血しています。
下図は左から抜糸直後と1ヶ月目の写真です。まだ赤みが強いですが欠損のない正常側(右の写真)と比較しても大体同じ大きさに揃えることができました。

先天性耳垂裂の手術例2

典型的な耳垂裂の症例。割れているのが嫌で接着剤でつけていたが皮膚が被れるようになったとのことで手術した。耳介上部もスムーズな丸みがなく軽度の先天的な変形があるが、手術するほどではないと希望しなかった。

埋没耳の手術は難しい手術の一つです。多くの場合、耳輪が埋没しているだけでなく形成不全を伴っていてやや小さく、また皮膚も不足するため、軟骨移植術、複合組織移植術、全層植皮術、皮弁形成術などを同時に行うため比較的侵襲の強い手術で、時間もそれなりにかかります(片耳で1時間半〜3時間程度。)術後、麻酔が切れるとほぼ全員がある程度の痛みを感じます。終了直後に痛み止め、止血剤を含む術後のお薬を内服していただきます。

症状によっては、広い範囲の皮膚を剥離する必要があり、全身麻酔を必要とします。
大江橋クリニックでは全身麻酔の手術は行いませんので、このような場合は専門施設をご紹介します。

折れ耳と一口に行っても、単に耳介の上部が上方に立ち上がらない場合もあれば、対耳輪の一部が欠損していたりカップのように丸くなっていたり(コップ耳と呼ばれることもあります)、耳介軟骨が小さく小耳症の範疇に入れるべきと思われるものもあり、通常と逆方向に折れ曲がるものなど様々です。
一人一人の症状に合わせて、場合によっては左右ごとに手術法を考えなければならず、難しいものです。大江橋クリニックでは病名をどうつけるべきか悩むような変形もここに含めています。

折れ耳の手術は程度により健康保険が適応されることがあります。

耳介軟骨の形をかえる手術

耳輪、対耳輪、耳甲介などの耳介軟骨の各部分に手を加え、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり一部を削ったりして、形を整えることができます。

外観を整える手術は通常は美容手術として自費で行っています。しかし程度によりますが、社会通念上 異様な外観を呈するものは、詳細なコメントをつけることにより保険適応を試みることがあります。

耳輪(耳の縁)を太くする、強調する手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)が薄く、きちんとロール状に巻き込まれていない場合は、軟骨の曲がりを調整するなどして縁を作ります。
軟骨移植が必要となったり、皮膚と軟骨の位置をずらしたりする必要があります。

逆にロールの巻き込みが深く、縁が太くなっている場合、それを細く調整することも不可能ではありません。軟骨の量が足りないこともあり、その際には一部を切って重ね合わせ、ずらしたりして形を調整することもあります。
曲がりのクセが強く、小幅な改善にとどまることもあります。

手術例:飛び出した対耳輪を低くする手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)よりもその内側の対耳輪が外に飛び出していて目立つため、やや低くして形を整えました。
軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、一部を削ったりして形を調整しています。このほか、耳の様々な部分の軟骨の曲がり方を微調整することができます。

上の症例ではイヤホンが外れやすいのを修正する目的の一環として軟骨の折れ曲がる位置を耳甲介の内側に移動させています。飛び出していた対耳輪をやや平らに矯正しています。

同様の手技で、対耳輪の幅を太くしたり、逆に細くしたりすることも可能です。

症状によっては耳介の表裏両方から軟骨を操作しなければならないこともあります。
軟骨膜切開やナイロン糸による矯正など様々な手法を組み合わせます。

大きい耳を小さく、小さい耳を大きくする手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り小さくする手術です。
軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、一部を切り取って重ね合わせたりして形を調整します。

小さな耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り大きくする手術も不可能ではありませんが、軟骨の量が足りないため移植が必要になります。一般の医療施設では肋軟骨や鼻中隔軟骨を取ってきて移植することが多いようです。
しかし耳介軟骨とは性質が異なるためいずれも一長一短です。できれば同じ側の耳介軟骨の一部を使い、位置を変えたり、一部を切って重ね合わせ、ずらしたりして形を調整したいところです。
しかし、その場合は使える材料に限りがあり、小幅な改善にとどまる可能性があります。

どれくらい大きいと異常と言えるのか

耳介縮小術は基本的には自費の手術となります。ただし異様な外観であるなど症状により保険が使える場合もあると思われます。
左右で大きさが違う場合はわかりやすいのですが、耳の大きさはもともと個人差が非常に大きいので、どこからが異常かと線を引くのは難しいものです(小さい方も同じです)。経験上、耳の縦径はおよそ6センチ程度を標準にプラスマイナス10%くらいの範囲にあれば異様には見えないと思います。横径は縦径の半分くらいです。一般には女性の方がやや小ぶりなことが多く、耳介の厚みも薄く耳垂(耳たぶ)も小さいことが多いようです・
耳の穴の周囲の凹み(耳甲介)はおよそ2×2センチ程度が標準で、わかりやすい目安で言えば一円玉は入るが五百円玉は入らない程度だと思います。

下の図は小耳症手術では他の追随を許さなかった故・永田先生のサイトから引用しました。永田先生が小耳症の肋軟骨フレームを作る際に、仕上がり寸法の目標とする「正常な耳」の寸法とプロポーションが書かれています。やはり縦方向の大きさは6センチと考えておられたことがわかります。

大きい耳は軟骨や皮膚を切り取って小さくできますが、切り取り方によって傷が残ります。自然に一回り小さくするのはなかなか難しい手術になります。

小さい耳を大きくするためには、今ある耳の材料(軟骨と皮膚)を使って一回り大きなフレームを作るため、軟骨の位置をずらしたり、内側の軟骨を切り取って形を変え、外側に移したりする必要があります。皮膚は通常足りないので、耳の裏側の皮膚を動かして表側まで持ってくるか、一部皮膚移植が必要となり、事前に設計図をうまく作っておかないと目的を達成できなくなります。

耳たぶだけを(軟骨を形成しないで)大きくしたり小さくしたりするのは、難易度はやや下がりますが、大きくする場合には材料をどこから持ってくるかが問題となります。詳しくは耳たぶの形を変えるの項をお読みください。

小耳症などに伴うものは保険適応可能と思います。美容的なものは自費になります。

原則的に大きな方の耳を
小さな方に近づけるほうが簡単です

軟骨の折れ込み方やカーブが異なるだけの場合は、耳介軟骨形成の考え方で対処できます。
しかし、軟骨や皮膚の量が異なる場合、移植して皮膚や軟骨の量を増やすのは困難を伴います。

極端に小さな耳は小耳症という分類になり、軟骨の移植が必須になります。

耳たぶを大きくする

小さい耳たぶはヒアルロン酸などのフィラーを注入することによりある程度大きくすることも可能です。しかし、注入物での拡大には限界があります。
耳の裏から皮弁を作成して表側にずらすことである程度大きな耳たぶを作れます。

ただし、裏側の欠損を塞ぐため皮膚移植などが必要となることもあります。その場合、裏側の傷はある程度目立ちます。また、体質によっては術後に皮弁が拘縮して徐々に小さくなり、変形してくることもあるので、長期間のフォローが必要です。

フェイスリフトなどの美容手術で変形した場合なども、手術によって調整できます。

通常は自費の手術です。ただし高度な変形であったり、腫瘍摘出などの手術により欠損や左右左などが生じた場合は保険の範疇で手術できる可能性があります。

耳たぶ(耳垂)が大きすぎたり小さすぎたりという場合に、皮膚と軟骨の位置をずらして耳の裏から皮膚を耳たぶに付け加えたり、特殊な切開で丸く整えて縫合したりする手術を、耳垂形成手術といいます。

先天性耳瘻管は生まれつき耳にある小さな穴で、多くは耳輪の始まり付近に開いた小さな穴(耳前瘻孔)として認められますが、耳の後部(耳後瘻孔)や耳たぶなどに存在することもあります。
この穴の中が感染を起こして耳の周囲が赤く腫れて痛無事があります。小学生ぐらいになってたびたび膿が出る、痛むなどのトラブルを起こすことが多く、可能ならば早めに摘出手術をお勧めします。
重症になると頬や首まで赤みが広がり非常に痛いことがあります。こうした場合まず抗生剤内服で炎症を引かせてから、原因となっている皮膚の管を完全摘出します。

  • 多くは瘻管の末端は閉じて盲端で終わっており、そこまで摘出すれば再発しませんが、外耳道の奥の方まで瘻管が続いている場合も稀にあり、その際には一期的な摘出が困難で、後日再手術が必要になることもあります。
  • 化膿して排膿を繰り返していたような場合、皮膚が薄くなり広く傷んでいて皮膚ごと切除しなければならない場合もあります。こうした場合はやや複雑な手術となります。
  • 通常の耳前瘻孔であれば、耳の前に数センチの細い傷が残ります。小さな穴であっても奥が深いため、切開範囲は割合大きくなります。

先天性耳瘻管摘出術、耳後瘻孔閉鎖術 健康保険適応の場合、手術料片側1カ所15,000円前後
この手術は、瘻管が深くまで続いている場合や皮膚の広範囲切除が必要となるなど難易度が高い場合は、皮弁作成術など別の術式が追加される場合があります。

副耳は耳の前方に小さな硬い隆起として生まれつき存在することが多いのですが、稀に顎や首などかなり下の方に発生する場合もあり、こうしたものは「軟骨母斑」などと呼ばれることもあります。いずれも、皮膚の突起の下には耳介軟骨が存在することが多いです。
小さなものは「いぼ」と思われていることもあります。赤ちゃんの時に小児科などで外側の皮膚の部分だけを部分切除されていて、軟骨が皮下に小さく飛び出して触ることもあります。

  • 下に隠れている軟骨が正常な耳介軟骨とつながっている場合もあり、局所麻酔で摘出しますが思ったより時間がかかることがあります。小学生以下では長時間同じ姿勢を保つことが困難で局所麻酔では摘出できず、入院施設のある病院で全身麻酔が必要なことがあります。
  • 通常は手術後、耳の前に線状の細い傷が残ります。目立たず気にならない程度で治る場合がほとんどです。

副耳(介)切除術 健康保険適応の場合、手術料片側1カ所10,000円前後

耳介形成手術の技術的側面に関心のある方は、以下のリンク先をご覧ください。

耳介形成手術の基礎(製作中)

手術の項目の中にはクリックして項目を広げると症例写真や術中写真等が表示される場合があります。
血液が写り込む場合などは彩度を落とすなどして衝撃を緩和する工夫をしていますが、血液の写った写真などが苦手な方は用心してご覧ください。

耳のできものや腫れを改善する手術

多くはピアストラブルに伴って耳垂(耳たぶ)や耳輪(耳の縁)に沿って発生します(ピアスケロイド)。その他、外傷ややけどによるものもあります。
粉瘤と紛らわしい場合もあり、時には合併することもあります(ケロイドの中心に粉瘤があることがある)。

上記の男性は海外在住で、初診時には手術せず帰国。1年半後に再診した際には倍以上に増大し赤みも強くなっていた。ピアスケロイドのため腫瘤は耳の前面にまで達してた。くりぬき切除し単純縫合した。術後の長期経過は不明。

盛り上がって目立ってきてから受診されることが多いのですが、硬く盛り上がったものは原則的に手術で全切除します。
レーザー治療(自費)が可能な場合もあります。
※ ステロイド注射が学会で推奨されていますが、注射単独では完全に治すことは困難な上、正常部分との境界が不明瞭となり、後々手術治療で確実にケロイドを切除することが非常に難しくなるため避けて欲しい治療法です。
完全摘出すると再発することは稀ですが、正常部分との境界が曖昧で取りきれずに(特にステロイド注射を受けていた場合)取り残した部分から再発することがあります。術後の長期フォローと内服治療や圧迫、レーザー治療などが必須です。再発した場合、しばらく内服療法などで治療した後再手術を行いますが、術後に放射線治療などが必要になる場合があり、その際には大学病院等の専門施設をご紹介することになります。

ケロイド(特に軟骨面を貫通して裏と表にまたがるケロイド)は切除と再建に技術を要しますが、健康保険で手術すると皮膚皮下腫瘍という非常に低額の手術押して査定されることがあります。耳介腫瘍摘出術として算定し、皮弁術や植皮術等を併用して請求しますが、耳介を再建する必要があっても耳介形成手術は認められないようです。このため大江橋クリニックではケロイドの切除・再建は自費手術とさせていただきます。

大江橋クリニックでは、主に平日の午後からの手術時間に予約で治療を行なっています。両側耳介のケロイドを摘出する場合や再建に時間がかかることが予想される場合は、2回目の手術日を他の平日に予定させていただくことがあります。
予約日は通常1ヶ月程度先になります。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間後に病理結果の説明を行います。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

※ 柔道耳などの硬く盛り上がった変形も、治療経験上、その一部は耳介ケロイドの場合もあると考えられます。

生まれつきあることもあれば(先天性色素性母斑)、大人になってから発生することもあります。
盛り上がって目立ってきてから受診されることが多いのですが、盛り上がったものは原則的に手術で切除します。(レーザーは小さなほくろに向いています。大きなものはとりきれずに再発することがあり、傷痕も目立つことがあるのでお勧めしません。)
耳の表面や縁に発生した比較的大きなホクロは、切除するとその部分の皮膚が欠損した状態になり、無理に縫おうとすると耳介が変形します。可能であれば周辺の皮下を軟骨から剥離して皮膚を動かし、変形しないように再建します(皮弁作成術)。耳の裏側の皮膚を皮下トンネルを通して前面に出して縫合することもできます(皮下茎島状皮弁)。それが難しい場合(軟骨の面など)では、裏側の皮膚を切り取って前面に皮膚移植(全層植皮術)することもあります。

ピアストラブルを起こすたびに自分で開け直した複数の近接するピアス穴を閉じる手術をした際に、対耳珠にある盛り上がったホクロ(近くに衛星病巣もある)を同時に切除した。変形を避けるため周辺の皮膚を軟骨から剥がして移動させている。そのためやや窮屈に尖った対耳珠になったが変形は許容範囲で傷跡は目立たない。傷が治ってからもう一度ピアス穴を適切な位置に開け直している。

大江橋クリニックでは、主に平日の午後からの手術時間に予約で治療を行なっています。予約日は通常1ヶ月程度先になります。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間後に病理結果の説明を行います。大きなものを切除した場合などは、変形なく治すためにはテーピングや内服などを含め長期間の通院が必要となることもあります。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

ホクロに似た腫瘍のこともあります

ホクロと同じように見える黒いできものが悪性腫瘍である場合もあります。最初から疑わしい場合はいきなり手術せずに大学病院等をご紹介することもありますが、通常はまず安全圏をとって少し大きめに周りの正常皮膚をつけて切除し、病理検査します。
切り取った部分が大きい場合、通常は他の部分から採取した皮膚を移植して塞ぎます(全層植皮術)。人工皮膚を用いる場合もありますが、この場合は必ず後日再手術が必要となります。
疑わしい場合、安易にレーザー治療や凍結療法などを行わないことが大切です。

ホクロのページも参照してください

耳の粉瘤

耳たぶや耳の裏側、周囲の皮膚などは「表皮嚢腫(毛包嚢腫、粉瘤、アテローマ、俗に脂肪のかたまり、脂肪腫などと呼ばれることもあります)」ができやすい場所の一つです。
耳にできる腫瘍の中では最もポピュラーなもので、耳垂(耳たぶ)に多発することもあります。
直径1ミリ程度の小さいものまで含めると片耳に数十個できることがあり、一回の手術で一度に十数か所摘出したこともあります。
腫れや痛みがなければ比較的簡単に摘出できますが、多発したものを一度に摘出する場合や極端に大きいもの、耳が変形している場合などは単純な摘出術ではなく皮弁術などやや複雑な手術を行う必要があります。

大江橋クリニックでは、主に平日の午後からの手術時間に予約で治療を行なっています。予約日は通常1ヶ月程度先になります。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間後に病理結果の説明を行います。体質により赤みが長引くことがあり、硬い傷痕が数ヶ月持続することもあります。そのような場合はレーザー治療や長期間の内服治療などが必要になることがあります。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

粉瘤の二次感染

耳の粉瘤

耳たぶの腫れる原因の多くはこれです。もともとあった粉瘤に細菌感染が起こると、数日で赤く腫れ、痛みや排膿を伴うこともあります。
通常はまず抗生剤を内服してもらいますが、皮膚が破れたり排膿している場合は応急の皮膚切開などが必要になります。(皮膚切開術、創傷処置など)

赤く腫れている間は根治的な手術ができません。切開排膿は一時的な効果しかなく、いずれ再発します。

根本的な手術は赤みが治まって腫れが引いてから、しこり全体をきれいに切除します。
腫れたことがなくても、小さなしこりでも、いずれ腫れる可能性があるので切除をお勧めします。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

軟骨や皮脂腺、その他の皮膚付属器から発生する悪性腫瘍もありますが非常に稀です。当クリニックでは今の所経験がありません。耳の皮膚から発生する悪性腫瘍としては、以下の3種類が比較的頻度が高く、治療経験もあります。

  • 基底細胞癌:比較的多く見られますが悪性度は低く、完全切除できると再発しません。脂漏性角化症やシミ、いぼと誤認されることが多いできものです。
    通常は良性腫瘍として摘出後に、病理検査で診断されることが多く、従って手術料等は普通の良性のできものをとる場合と同じです。
    但し悪性と判断された場合、術後長期の経過観察が必要となります。必要に応じて他の施設(大学病院など)をご紹介することがあります。再手術が必要となることもあります。
  • 有棘細胞癌:これも上記とよく似ていますが、少し悪性度が高くリンパ節転移などが見られることがあります。切除する場合、周囲を広く大きく深く摘出する必要があります。進行度によっては化学療法など他の治療も必要になることがあり、全身検索のため多くは大学病院へのご紹介になります。
    最初から悪性を疑う場合は、手術に踏み切る前に専門施設をご紹介することが多いです。
  • 悪性黒色腫:小さいうちから遠隔転移などが見られる悪性度の高い腫瘍です。完全切除できたと思われても長期フォローが必須なため、このがんを強く疑う場合は、通常は最初から専門施設をご紹介しています。

耳の皮膚がんの例:左耳介後面の基底細胞癌です。周囲を広めに切除し、局所皮弁で再建しています。経過は順調でメガネも普通にかけられます。古い写真をコピーしたもので一部色が飛んでいますが、イメージは伝わると思います。私が執刀した耳の皮膚がんの第一例目で30年近く前のものです。

耳の皮膚がんの例:これも同じ頃に勤務先の病院で手術した右耳介後面の有棘細胞癌です。周囲を広めに切除し、軟骨も一部切除して局所皮弁で再建しています。耳の形を保つため耳輪軟骨の一部を細く残し、腫瘍直下の軟骨の内側をくり抜いています。耳輪軟骨の弾力のため皮弁の緊張が強く一部壊死しましたが徐々に回復しました。皮弁採取部は上腕内側からの全層植皮で覆いました。古い写真をコピーしたもので一部色が飛んでいますが、イメージは伝わると思います。

同じ症例の耳を横から見たものです。周囲の皮膚を広めに切除していることがわかります。皮弁で再建していますが、切除時に耳輪の軟骨を残してその上に皮弁を被せたため、縫合後には軟骨の弾力で皮膚に緊張がかかりましたが、軟骨の復元力のおかげで徐々に皮膚が伸びて形は改善していきました。
この症例は病院勤務時代のもので、術後には頸部リンパ節の予防的放射線照射も行っています。現在なら転移の有無を正確に評価するため大きな病院を紹介すべき症例です。

耳(外耳、耳介)にできものを見つけたら、レーザー治療などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

皮膚科的な耳(外耳)のトラブル

イメージ写真:新緑

できものの多くは粉瘤(表皮嚢腫・毛包嚢腫)です

耳の粉瘤

赤く腫れてケロイドのように見えるが、ぶよぶよと柔らかく、内部に膿を持っています。切開すると大量の膿が出て縮小します。

急に腫れてくる痛いできものの多くは、耳たぶなどに以前からあった小さなしこりが急に感染を起こして大きくなったものです。切開が必要なほど化膿している場合は少なく、ひとまず抗生剤と消炎鎮痛剤を内服してもらうと収まるものが大半です。(背中、お尻などでは放置して大きく腫れ、その場で切開が必要な場合が多いです)

粉瘤でない場合やピアストラブルなどに合併した場合は切開排膿やピアス穴にシリコンチューブを通すなど何らかの処置が必要となることがあります。多くは局所麻酔までは必要ありませんが、治るまで日数を要することがあります。

耳のケロイド

こちらはピアスホールから発生したケロイド。内部は硬く、通常圧迫しなければあまり痛みはありません。前後に貫通して雪だるまや鉄アレイ、瓢箪型になることが多く、切除する場合は全切除しないと再発します。

ピアスホールにできたケロイド(赤く盛り上がって硬いできもの)が痛む場合は、切除しないと症状が改善しないこともあります。ピアスケロイドは正しい処置をしないと再発を繰り返して大きくなり、切除しても耳の変形を残すことがあり、難しい治療になってしまいます。

耳介のケロイドは全切除が基本です。注射で治そうとする医師がいますが、かえって難治性になることもあり、手術しても治らなくなることすらあります。逆に残さず切り取れば再発しないものが大半です。詳しくは下の「耳のケロイド」の欄をご覧ください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳の粉瘤

元からあった小さなできものなどが腫れた場合

元々耳たぶ周囲にあったたくさんの小さなしこりが腫れて融合したもの
 
耳にできた痛いできものの項を参照してください。耳垂(耳たぶ)にあった小さなしこり(粉瘤、表皮嚢腫等と呼ばれるものです)が腫れることが多いですが、生まれつきある耳前瘻孔などが化膿したり、ピアスホールなどが感染を起こしたりすることも稀ではありません。
ピアストラブルで発生したケロイドが比較的短期間に大きくなることもあります。

基本的には膿を持っているものは切開して排膿し、抗生剤などの内服で治療します。外用剤(塗り薬)だけで治癒することは稀です。赤く腫れている間は全摘出はできないので、一度腫れが治ってから、再発防止のために手術で摘出する方針をとることが多いです。
大きなできものをとった場合、耳介の変形を防ぐために皮弁術などの形成外科的手術を併用したり、後日耳の形を再建する必要が生じることもあります。

下の「耳の粉瘤」の項も併せてお読みください。

スポーツ外傷や打撲などによって突然腫れて痛い場合

柔道耳

下の「耳介血腫・耳介偽嚢腫」「いわゆる柔道耳」の項もお読みください。

ヘルメットをかぶっての作業中に肩に担いだ資材の一部が耳に当たり膨らんできたもの。本サイトのトップページにも治療後の写真を載せています。
 
多くは強く耳を打つなどのきっかけがはっきりしていますが、アトピー性皮膚炎などで耳を掻いていたら腫れてくることなどもあり、原因がはっきりしないものもあります。(その多くは耳介偽嚢腫ではないかと思われます)

受傷後数日以内であれば、中に溜まった血液を抜いた後に圧迫固定を長期間(通常2週間以上)続けることで出血が止まり変形を防ぐことができます。
ただし圧迫には麻酔注射をして糸でガーゼやスポンジを縫合するなどの必要があり、外来時間中に簡単にできることは少ないので、多くの場合そうした処置は行われず、すぐに再発します。

大抵の場合耳の上部の縁のあたりから痛みを伴って膨らみ、耳介血腫として耳鼻科等で血を抜いてもらって一旦小さくなったがまた再発したという方が多いです。血ではなくリンパ液の溜まった耳介偽嚢腫の場合は、痛みが特にないのにいつの間にか腫れてくるので注意が必要です。

柔道耳

この状態で長年放置され、軟骨が増えて硬い塊になったものがいわゆる柔道耳(保険病名:花キャベツ状耳、カリフラワー耳)と呼ばれる状態です。体質によってなりやすい人があります。
スポーツに起因するものは、そのスポーツの名称をとって、柔道耳のほか「レスラー耳」「力士耳」「ラグビー耳」などと呼ばれたり、形の印象から「餃子耳」などと呼ばれたりもします。
一般に3週間以上たったものは圧迫等では改善しないため手術が必要とされています。

全体がむくんだように腫れてきた場合

耳介の浮腫は皮膚炎やアレルギーに伴って起こる場合があります。原因はさまざまですが、ステロイド等を含む比較的強力な内服治療が必要なことが多いです。上の「耳の皮膚炎」の項もお読みください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳のイボやシミ、脂漏性角化症

耳のいぼ

アトピー性皮膚炎に伴って耳甲介の中に生じたイボ(脂漏性角化症)

基本的には耳介皮膚表面のできものは形なりに全切除して病理組織検査を行った方が良いと思います。露出部であり日焼け止めなども塗らない部位なので、光老化の好発部位であり、時に皮膚癌の一種と紛らわしいイボや日光角化症(光線角化症)など前癌状態と呼ばれるできものができたりします。

小さなイボは尋常性疣贅など診断がはっきりしていればレーザー治療(自費 1箇所あたり税抜3,000円〜5,000円程度)でとってしまうことができます。
稗粒腫(1ミリ程度の小さな白いできもの)などは診察室で小さく切開して圧出処置することもあります。

レーザー治療をお勧めしています。凍結療法は一度で取りきれないことが多く、現在行っていません。

皮膚皮下腫瘍のページも参照してください

日焼けによる炎症後の花弁状色素斑(いわゆる老人性のシミ)など、シミ用のレーザー(自費)で治療できる場合もありますが、耳のシミと思われているものの多くは脂漏性角化症などイボに近い少し盛り上がったものです。時には一部が「皮角」として硬く薔薇のとげのように突き出してくることもあります。
レーザーで削り取る方法がありますが、盛り上がりの強いものは悪性化を疑って切除する方が無難です(特に高齢の方)。大きく切除した場合、欠損を塞ぐために植皮(皮膚移植)や皮弁作成術が合わせて必要になることがあります。

悪性腫瘍(皮膚癌)のこともあります

脂漏性角化症とよく似た悪性腫瘍には、有棘細胞癌・基底細胞癌等があります。
脂漏性角化症はシミのように大きく広がることもありますが、イボ状に褐色のやや硬いできものとして多発することがあります。その中の一部が皮膚癌の一種(有棘細胞癌や基底細胞癌)となったり、最初から癌としてシミやイボのような形で発生することもあります。
良性と判断してレーザー治療等を行っても再発する場合は、その時点で悪性を疑って手術をお勧めすることがあります。詳しくは下の耳の皮膚癌の項を参照してください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

ピアストラブル

金属アレルギーであることは少ない

ピアス用消毒剤によるかぶれの例
 
イアリングやピアスなど耳につける装身具によるかぶれやトラブルの多い場所です。耳たぶがピアスやイアリングでかぶれて赤くなり、じくじくしてきても、金属アレルギーとは限りません。
装着時の角度などでピアスホール内に小さな傷がつき細菌感染を起こしていたり、キャッチの締めすぎによる鬱血が引き金になるなどさまざまな原因が考えられます。

ピアスを装着するときのちょっとした注意点や習慣を守るだけで、問題なくピアスをつけ続けることが可能な場合もあります。まずは診察を受けてみてください。

ピアストラブルの軽度のもの(ピアス穴から膿が出る、穴の周囲が腫れて痛い、ピアスが通らないなど)は内服薬(抗生剤や消炎剤)と皮膚科的処置(シリコンチューブ留置や洗浄、軟膏処置など)で治まることもあります。
不良肉芽が生じたり、ピアスホールが裂け、ちぎれてしまったものなどは、手術が必要となります。
ピアスによる耳切れを参照してください。

チャームアップピアッシングも合わせてご覧ください。

消毒せずによく洗う

ファーストピアスを開けた時に医療機関などでもらった消毒液を捨てずにとっておき、トラブルのたびにつけるという方がいます。消毒液は基本的に処方されてしばらく使用したら残っていても捨ててください。血液や体液などの混入により殺菌効果がなくなったり、雑菌が繁殖したりして逆効果になっていることがあります。

トラブルが生じたら水道水など流水のシャワーで患部をよく洗い流してください。細菌やかぶれの成分を含む体液などは洗い流すことで減少させることができます。
瘡蓋や固まった体液、細菌が作るバイオフィルムなどが治癒を妨げていることがあり、洗浄するだけで症状が改善することが多いです。

ピアストラブルは市販の塗り薬などを試す前に、まず皮膚科の診察を受けてください。ファーストピアス装着後のトラブルは、必ず処置を受けた医療機関にご相談ください。

耳の皮膚炎

耳の皮膚炎は治りにくい

アトピー性皮膚炎に伴う耳の皮膚炎の例
 
耳(外耳、耳介)は顔の両側にあって頭髪に覆われている場合もあり、頭の両側に突き出しているという位置と形の特性から、日常的に刺激を受けやすく、皮膚炎にいったんなると治るまでに時間がかかります。
耳の皮膚炎には次のような特徴があります。

  • 日光の紫外線による皮膚炎(急性の日焼けや慢性の皮膚の変化)が起こりやすい
  • 髪につける整髪料やシャンプーなどによる慢性の皮膚炎が起こりやすい
  • 毛染めの染料などによるかぶれが起こりやすい
    頭皮に症状があまりなく、生え際や耳だけがかぶれることもある
  • メガネやマスクのゴムなど耳にかけるものの素材によるかぶれが起こりやすい
  • イアリングやピアスなど耳につける装身具によるかぶれやトラブルが多い
    金属アレルギーのこともあれば、調子が悪いのに無理にピアスを使用したり、重すぎるピアスの常用やキャッチの締めすぎなどによる機械的刺激による場合もある
    ピアストラブル参照
  • 花粉症などによる季節的な皮膚炎が、特に外耳道(耳のあな)に生じることがある
  • 頭皮と連続して起こる皮膚炎や感染症が耳に及ぶことがある
  • 耳の水虫は痒くないこともあるので意外に気づかない
  • 耳かきなどの刺激や細かい傷に起因する外耳道の皮膚炎でかゆみを生じることがある
  • 耳にヘルペスや帯状疱疹ができることがある
    水疱ができ痛みを伴うことが多いが、診断がつかずに重症化すると顔面神経麻痺などを引き起こすこともある

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳の皮膚炎の治療のポイント

  • 思いがけないものが原因物質となっていることがあるので、まずは思いつく限りのものはいったん中止します。
  • 毛染め剤などの他、使い慣れたシャンプー、ヘアスプレーなども原因になり得ます。特に長い間日常的に使用していたものが繰り返した刺激によってアレルギーの原因となる場合は、気づきにくいため使用を中止せず、なかなか治らないことがあります。
  • 原因を探るため皮膚の一部を軽く削って調べたり、アレルギーの「血液検査」をすることもあります。ただし血液検査ではっきりと結果の出るものはそれほど多くありません。実際に使っている毛染め剤などによるパッチテストが必要なことがあります。
  • パッチテストは現在のところ当院では行なっていませんが、信頼のおける医療機関をご紹介しています。パッチテストでは、どのような症状が出たら陽性と判断するか、の経験と技量が重要です。同じ症状を別の医師が判定すると結果が異なることもあります。
  • 原因物質が分かれば避け、消炎や保湿のために外用剤を使用します。内服が必要なこともあります。症状の出方によっては、他の病院などの専門施設(皮膚科、耳鼻科、その他)をご紹介することもあります。

耳の接触性皮膚炎

刺激物質またはアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)によって、耳の皮膚が炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
頭皮や髪につけたものによって、頭の中にはかゆみがないのに耳だけかぶれることもあります。
原因物質との接触を避けないと、繰り返し症状が起こり、徐々に重症化することがあります。

治療法は原則的に体や顔の皮膚炎とほぼ同じですが、耳の特性上治りにくいことがあります。

ほとんどの皮膚炎は塗り薬と内服薬で治療しますが、外科的な処置や皮膚をこすったり切り取ったりする検査が必要な場合もあります。

耳のアトピー性皮膚炎

耳のアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の症状の一つとして耳に治りにくい皮膚炎が続くことがあります。
写真は耳の穴の中にも赤みが広がり、痒みのある状態です。真菌感染を起こしていることもあるので皮膚を擦って調べる検査も必要です。

  • 慢性化すると皮膚が厚くなり、黒ずんでくることもあります。
  • 短期間で治癒する病気ではないので、同じ医師の下で長く治療を継続する事が最も大切です。
  • アレルギーの血液検査などで原因を探りますが、症状とは必ずしも一致ないことがあります。
  • 季節性があるので、悪くなる時期を把握しましょう。
  • のみ薬などがあっていないと思ったら、勝手に中止したり、医師を変えたりせず、処方した医師に必ず相談する事。
  • 転医するときは、今までの治療法などを書いた紹介状をもらう事。

アレルギー科のページも参照してください

耳の脂漏性皮膚炎

頭部や生え際など耳の近くの皮膚が慢性の炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
毛穴に常在する真菌などが皮脂を分解し、炎症物質を作り出すのではないかと考えられています。

  • 体質的なものといってもよく根気よく治療を続ける必要があります。
  • シャンプーや髪の洗い方などを工夫することで改善することもあります。
  • アレルギーの「血液検査」などは必ずしも有効ではありません。
  • 基本的には炎症をおさめる外用剤での治療が中心となります。

耳の水虫

治りにくい慢性皮膚炎だと思って市販の外用薬などを付けていたが、実は水虫菌がついていた、という場合もあります。
身体の他の部位にあったものがうつることもあります。耳の穴の周囲などの赤いかぶれは要注意です。

  • 診断をしっかりつけることが大切です。皮膚科専門医の検査を受けましょう。
  • 赤みやかゆみは徐々に改善しますが、比較的治療に時間がかかります。
  • 身体の他の部位にもできていることがあるので診察を受けましょう。