【 完全予約制 】
大江橋クリニックはいわゆる脱毛サロンや医療レーザー脱毛を専門に行っている美容クリニックではありません。
しかしレーザー脱毛に関する深い知識と長い経験を有する医師が、開業当初より自らハンドピースを握ってレーザー脱毛を行なっています。
施術は毎回必ず医師が自ら行い、看護師や無資格のスタッフに任せることはありません。
大江橋クリニックでは、上記厚生労働省の通知を遵守し、開業以来レーザー照射は医師のみが行なっています。医師が責任を持つことで、照射に伴って起こりうるトラブルを最小にし、効果を最大にあげるため、様々な工夫を行なっています。
多くの施設ではレーザー脱毛の照射を看護師等に行わせています。上記のような厚生労働省の明確な通知があり、違反すれば刑事罰もありうることが、警察、各都道府県、市町村、医師会などの医療関係団体にも周知されているのに、なぜいまだに改まらないのでしょうか。
実は日本で最初にレーザー脱毛を始めた大城クリニックでは、毎回レーザー照射前の診察は医師が行うものの、実際の照射にあたっては医師の代わりに訓練を受けた看護師が医師の指示(主に照射エネルギーの強さ)に従って施術を行う方法を取っていました。その後に脱毛を始めた医療機関の多くはこの真似をしたため、日本ではこのやり方が主流になったのです。
大江橋クリニックの院長は当時大城クリニックに勤務し、レーザー脱毛の初診担当医として患者さんの診察と説明を行なっていましたので、経緯はよく知っています。
ただし当時の大城クリニックでは、毎週のように医師・看護師合同でレーザー勉強会を行なっており、看護師たちもレーザー照射に関する十分な知識を持っていました。またカルテには医師が照射条件(具体的には照射する強さ=フルエンス)を記入し、看護師はその条件のもとで照射を行なっていました。(現在と異なり当時のレーザー脱毛専用機は、パルス幅が固定であり冷却装置もついていなかったので、条件設定はこれだけで良かったのです。)
照射前後の患部のチェックも医師が必ず行い、もし患部に赤みが残っていれば追加冷却を指示し、赤みが引くのが遅ければステロイド軟膏を塗布させるなど、きちんとした診察後に帰宅させていました。看護師が勝手に照射条件を変更したり、医師の術後診察なしに患者を帰宅させることはありませんでした。
医師以外のものがハンドピースを操作して照射することが必ずしも直ちに違法とは言えませんが、レーザー照射技術は医療行為とみなされ、かつては「手術」の項目に分類されていました。医師が自ら行うべき「手術」の項目に置かれたということは、高度な医学知識に裏付けられた正確な技術が必要であることを意味します。
眼科・耳鼻科・歯科等で行われるレーザー手術は当然医師が執刀します。形成外科・美容外科領域でも脱毛やレーザートーニングなどのダウンタイムの少ない美容照射以外の(ダウンタイムの生じる、強い)レーザー照射は通常医師が行います。脱毛だから非熟練者が行なっても安全だとは言えません。危険性が少ないかもしれないという程度です。
というわけで、大江橋クリニックの院長はレーザー脱毛には1997年に日本国内で治療が開始された直後から取り組んでいます。おそらく実際にハンドピースを握って脱毛治療に当たってきた医師の中では、最も経験年数が長い一人だと思います。(詳しくは下記、より詳しいレーザー脱毛の説明ページを参照してください。)
レーザーはある種の物質(ルビー、アレキサンドライト、ガーネットなどの宝石類や半導体、色素やガスなどレーザー媒質と呼ばれるもの)に高いエネルギーを与えたときに発生する均質な光で、その光の束に含まれる個々の光は、どの部分をとっても全く同じ性質を持っています。(IPLなどのフラッシュランプが幅広い波長の光の不均一な混合物であるのと大きく違う点が、この均質性です。コヒーレンスが高いと表現されます。)
ある波長をもったレーザーは、それぞれ特定の物質によく吸収されます。吸収されるとは、エネルギーをその物質に与え、その結果物質が加熱されることを意味します。レーザー脱毛に使われるレーザー光は、メラニンによく吸収されるものが選ばれています。従って、メラニンを含む細胞は照射により加熱されますが、メラニンを含まない細胞は加熱されません。
つまり、黒い色素をもった細胞は短時間のレーザー照射によって急速に加熱破壊されますが、その周辺にある色を持たない細胞は、照射条件によって黒い細胞が周辺に熱をどの程度伝えるかで運命が決まります。もし極めて短時間に強いエネルギーで加熱されると、周辺に熱が伝わる時間的余裕がなく、黒い細胞だけが極めて急速に加熱されて爆発的に破壊されます。その際、溢れ出すエネルギーの量に依存して、周辺の細胞もある程度巻き添えを食って破壊されあるいは変性することになります。
十分時間をかけてゆっくりと加熱されると、熱は周囲に流れ出し、周囲の細胞も均等に暖まっていきます。周囲に熱が伝わり始めるまでのタイムラグは黒い細胞(集団)の体積によって計算することができます。これが有名な熱緩和理論です。
この理論により、皮膚表面にある、細かいメラニン顆粒を少しだけもつ細胞は(メラニン顆粒のエネルギー吸収と発散により)比較的ゆっくりと周囲に熱を拡散しながら加熱されるが、毛根のような黒く大きな細胞集団にとっては熱の逃げ場がないような一定の時間(パルス幅)を設定することができ、その程度の時間(20〜50分の1秒程度)で光を照射することにより周辺の細胞を死滅させずに脱毛を起こすことができます。こうした100分の1秒を超える(レーザーの世界では)長い時間で光を照射するレーザーを「ロングパルスレーザー」と呼んでいます。
実際には、毛の太さとメラニンの量で反応が変わってきますが、このようにして皮膚の中に埋もれた毛根部分を選択的に加熱し、毛を燃やすとともに、その周辺にあるメラニンの少ない「毛包幹細胞」にもある程度熱を加えて変性させ、次世代の毛が勢いよく成長するのを妨げようとするのが、レーザー脱毛の理論的背景です。
したがって、毛は黒くなければ反応しませんし、あまり細い毛は太い毛とは照射条件を変えないと反応させることができません。ある条件で照射したときには、その条件に合致する太さ、黒さの毛だけが選択的に脱毛されます。太すぎる毛も細すぎる毛も脱毛されません。またいわゆる産毛(透明に近い細い毛)はメラニン色素が少なすぎるため通常の方法では脱毛できません。
毛が次々と生え変わっては成長するサイクルに関しては、昔から研究が積み重ねられてきましたが、古い毛が抜け落ちたあとの毛根に、次の毛の元になる細胞がどのように移動してきて成長が始まるのかは、レーザー脱毛が普及し始めた10数年前位まで、大げさにいえばほとんど謎に閉ざされていました。(毛の元になる細胞:幹細胞がどこにあるのかが初めて明らかになったのは1990年代になってからです)
100年以上前から行われていた針脱毛ではプローブ(針というと差し込むだけで刺していないのだから針ではないというエステ関係者もいます)を毛穴から毛に沿って差し込み、毛根の深さ(普通はちょっとこつんとした手応えがあります)に達したら電気を流し、毛乳頭の辺り(盛んに毛が作られている部分です)を破壊するために毛が生えなくなるのだと漠然と考えられていました。
ところが、レーザー脱毛になると問題は複雑化します。レーザー光は本当に毛乳頭まで達して毛乳頭の細胞をを破壊しているのだろうか。毛乳頭を破壊しなくても脱毛が起こっているのではないのか。そもそも毛の種になる「幹細胞」はどこにあるのか。(実はその辺りは → 渋谷高橋医院・高橋先生のお書きになったものが大変よくまとまっていますので、そちらを参照いただいた方がよいかもしれません)
* 高橋医院とその傘下にあった脱毛サロン「ドクタータカハシ」は、無資格者に脱毛行為を行なわせていたため院長およびスタッフの逮捕という事態となり、すべての事業を廃止したので、残念ながらこれらの有益な文章は読めなくなりました。高橋先生自身は脱毛理論に関して造詣も深く優れた医師として尊敬申し上げていました。残念な事です。
ようやく1990年代の終わり頃になって、毛の種になる幹細胞は深い毛乳頭ではなく、皮膚の表面から1ミリほどのところにある立毛筋の付着部(膨大部:バルジ)あたりにある事が分かってきました。その辺りの細胞を取って移植すると、本来毛の生えない部分にも毛を生やすことができ、しかも細胞の数で毛の太さをコントロールできる事が実験で確かめられたのです。
レーザー脱毛の学会でこの事が発表されたとき、会場にいた皮膚科の先生が「これは大変だ、教科書を書き直さなくては」とおっしゃっていたのが思い出されます。ともあれこうして、レーザー脱毛の理論は徐々に進歩して行きました。
2026年2月25日 理化学研究所とオーガンテックは毛の成長・再生に不可欠な「第3の細胞」を発見したと発表。
この細胞は「毛包再生支持細胞」と名付けられた。これまで「上皮性幹細胞」と「毛乳頭細胞」の2種類は知られていたが、この第3の細胞が加わることで、成体マウスにおいて毛包を完全な形で再生することに成功した。
この「毛包再生支持細胞」はヒトの大人にも存在しており、これを加えることで体外での毛包作成、生え替わり(ヘアサイクル)の再現が可能になることが示された。
レーザー脱毛は、毛根の構造を破壊してしまうわけではありません。照射後も毛は生えてきます。これは非常に大切な事で、もし毛根を完全に破壊してしまえば、毛穴に付属する皮脂腺や感覚器も障害されて肌は大変なダメージを受けます。
まず、レーザーを吸収した黒い毛は細胞が加熱されて変性し、数日から1ヶ月といった長い期間をへて徐々に抜け落ちます。一方レーザーの熱を間接的に受けた毛包幹細胞はその数を減らすとともに一時的には弱って休止期に入るので、抜けた後しばらくは毛の生えて来ない状態が続きます。
やがて徐々に毛の生えるヘアサイクルは復活し、前よりゆっくりと、前より細い毛が毛穴から伸び始めます。非常に細くなった毛は、産毛のように色がなくなり、処理する必要がありませんが、中にはあまり熱作用を受けなかったために、もととあまり変わらない太さで伸びてくる毛も混じります。
このように、レーザー脱毛では、復活した毛は「まばらに」「細く」「伸びが遅く」なっているのが普通です。ある程度の時間をおいて、更にレーザーを照射する事で太い毛の数と割合を減らして行きます。
照射間隔については、エステでいう一定の休止期(いわゆる毛周期)のようなものはレーザー脱毛に関しては特に考えなくてよいのではないかと考えています。
もし毛穴を破壊すると、皮膚には様々な不都合が生じます。毛はいらないが、毛穴は体にとって必要な器官です。
毛穴のない皮膚、例えばひどいやけどで傷が残ったつるつるの皮膚をみれば、それは決して美しくも健康的でもない事がわかります。医療脱毛では、毛穴は破壊せずにできるだけ温存し、生えてくる毛だけを取り除くのが理想です。しかし、レーザー脱毛を「強い光などを照射して毛根を破壊する行為」と定義すると、毛根を破壊しない脱毛など果たしてありうるのだろうか、という疑問がわきます。
本当は「破壊」ではなく適度に弱ってもらい、太く長く伸びる勢いの強い毛から、細く色の薄い短い毛に変わって貰えばそれで十分ではないでしょうか。大江橋クリニックでは、医療脱毛をそのように捉えて、あまり徹底的に撲滅しないように優しく照射しています。
毛包幹細胞の正体については未だに議論がありますが、今のところ皮脂腺開口部付近のバルジ(盛り上がっているという意味)またはその少し上の立毛筋付着部から峡(細くなっているという意味)の辺りに存在するのは確実視されています。最近では、バルジから移動した幹細胞が毛乳頭の上部で分裂を開始することが、次の毛の毛根を形成するスタートであることも確かめられてきました。(下記は押森直木氏 2012年論文より引用 規定の著作権表示は左端)
幹細胞というのは、普段は分裂せずに休眠状態にあり、必要な時に分裂してその一部を新しい細胞集団の種とした後、残りは再び休眠するという性質を持っています。従って、その存在を眼で見るためには、分裂するとなくなってしまう物質を細胞に取り込ませ、その物質を指標にして一定の時間が経っても分裂せずに残っているものを捜すという方法がとられます。
こうした研究の結果、毛包の幹細胞は毛だけでなく、毛の細胞にメラニン色素を供給するメラニン細胞や、毛の周囲を取り巻く皮膚の細胞にも変化する多能性を持っている事が確認されました。
(右図は 西村栄美氏 2009年「ニッチを介する幹細胞の維持機構の解明」上原記念生命科学財団研究報告集より引用)
ということは、幹細胞を死滅させればこれらの細胞の供給源も破壊する事になり、皮膚の恒常性の維持にとって重大な影響を及ぼす事になります。
レーザー脱毛にあっては、幹細胞の数を減らし、生えてくる毛を細くし、毛に含まれるメラニン色素を少なくすることで目的を達したということができます。
つまり、毛穴はちゃんと存在するが、そこから生えてくる毛は色の少ない見えにくい毛に変わっている、というのがベストなのです。
ではここで、私たちがいらないと思っている「むだ毛」とは一体何かを考えてみましょう。「むだ毛」は社会生活を行なう上で美容的に好ましくないため、伝統的に抜いたり剃ったりして取り除く事が習慣化した体毛の事です。
代表的なのが女性の腋の毛ですが、最近ではこれに加え脚の毛、口回りの毛、陰毛の一部または全部、眉、額の生え際、臍周囲や乳輪、背中、うなじなど、髪と睫毛を除いた体毛のほとんどが不要と見なされ、中には全身の毛を脱毛したいという女性も現れました。
男性は文化的に体毛はあって当然とされてきたのですが、最近では髭、腕や脚の毛、臀部や陰毛、耳や鼻毛、更にはこれまた全身の脱毛を希望する方も訪れるようになりました。
これは日本という閉ざされた特殊な社会の文化・風習です。世界に眼を転じれば、例えば少し前までヨーロッパでは女性が腋の毛を伸ばしているのは普通でしたし(現在では逆に腋毛だけでなく陰毛も除去するのが常識になりつつあります)、民族によっては眉毛が眉間の中央で繋がっている事が美人の条件だったり(繋がっていない女性は濃い眉墨で眉間を塗りつぶします)年配の女性はあごひげを伸ばす事で威厳を保ったり、あるいは全身にびっしりと体毛の生えた女性を「うさぎちゃん」、男性を「くまちゃん」などと呼んで愛でる風習のある民族もあります。逆にイスラム圏の一部などでは女性の体毛は不浄とされていますので例えば病院に行くと病気と関係なくまず問答無用で陰毛や脚の毛を剃られてしまったりもします。
逆に男性は髭を生やすのが当然とされるイスラーム圏の国では、髭がなければ子供かゲイと見なされたりしますし、体毛が薄ければレイプの標的とされるため温泉などの入浴を断られたりする社会もあります。
このように、体毛は生物学的な役割とは無関係に、その人の属する集団の風習によって必要だったり不要だったりするわけです。
むだ毛の定義でも述べた通り、むだ毛とはいえそれは特定の人類社会に取って不要なだけであって、生物学的には無駄ではありません。従って、一本もない状態を維持するために時間とお金を浪費するよりも、たとえ残っていても処理に手間がかからない方法が望ましいといえます。
海外の文献では、永久性が達成されたかどうかは議論にならず、何回の照射で何%減少したか、が話題になります。例えば数回の照射で処理にかかる時間が半減したとするならば、十分目標が達成されたと見るべきなのではないでしょうか。
体毛は頭髪のように頭部の皮膚を保護したり、眉毛や睫毛のように眼にゴミが入るのを防止したりする他、皮膚の感覚器として重要な役割を果たしています。風がそよぐような微細な皮膚感覚は、毛を短く剃ってしまうと感じにくくなります。
また毛の角質は非常によく光と水分を吸収し、日焼けを防ぐとともに乾燥した状態ではゆっくりと水蒸気を放出して、皮膚表面の水分調節、体温調節も行なっています。したがって体毛を剃ると皮膚は乾燥しますし、日光過敏、光老化などの症状も起こりやすくなります。
しかしこれらは必ずしも生命活動に必須というほどではないので、脱毛しても特別に不都合という事はありませんが、すべて除毛してしまうと見た目には人を非生物化、無機質化するため人形のような性的魅力の乏しい存在に変化させる働きはあるといえます。(これを不都合と見るか好ましいと見るかは文化的な条件に規定されると思われます。)
これに対し、毛穴の働きははるかに重要です。毛穴は排泄器官であると同時に、非常にわずかですが物質を皮膚から体内に取り入れる際の入口にもなります。毛穴から主に出てくるのは皮脂ですが、これは皮膚の保湿には欠かすことができない物質です。皮脂が欠乏すると非常にカサカサと乾燥し、痒くなる事はある程度の年齢の方なら実感されるでしょう。
毛穴が破壊されたり、皮脂腺が萎縮すると、皮膚は正常な機能を保ちにくくなり、非常に不快な思いをする事になります。
過去100年以上にわたって、エステサロンなどで行われる、腋や脚のむだ毛を減少させる「脱毛治療」は、ワックスなどを塗って剥がしとる「一時的な脱毛」か、細い針電極を毛穴に差し込んで通電する、いわゆる「針脱毛」によって行なわれてきました。
ワックス脱毛はもちろん1ヶ月程度の効果しかありませんし、「針脱毛」は毛を一本一本処理していくため、時間も費用もかかり、痛みも強く、あまり一般的なものではありませんでした。
一方で、肌に黒いメラニン色素をもった「あざ」の治療に、約50年近く前からレーザーが使用されるようになり、治療効果が上がるとともに、治療を繰り返した場所は肌の色が白くなるだけでなく、黒い毛が生えなくなることが知られるようになりました。
1980年代に入り、レーザーがメラニン色素を含んだ細胞を加熱変性させる仕組みが理論的に解明され、ついに「皮膚を傷めることなく毛根を加熱して毛を脱落させる」条件が明らかになると、その理論に基づいてアメリカで脱毛専用のレーザー機器の開発が始まります。1996年にはメラニン色素によく吸収されるルビーレーザーによる脱毛器が開発されましたが、色素選択性が強すぎて有色人種では肌の表面のメラニンにまで吸収されてしまうためヤケドを起こし、白人以外には使えない機械でした。続いて開発されたのがアレキサンドライトレーザーによる機器で、1997年には早速サイノシュアー社の脱毛器LPIRが日本に輸入されました。(LPIR = Long Pulse Infra Red という略称通り、パルス幅の長い赤外線レーザーで、メラニン色素への選択性はやや落ちるものの需要の多い腋窩の黒い毛に適した機器でした。)
大江橋クリニックの院長は、その当時ちょうどヨーロッパに留学中で、日本におけるレーザー脱毛の黎明に立ち会うことはできなかったのですが、翌1998年には帰国し、日本で最初にサイノシュアー社製LPIRを多数輸入して治療を開始した大城クリニックに入職して、1998年から1999年にかけてレーザー脱毛の初診担当医として勤務していました。
当時はまだレーザー脱毛の効果や限界・長期成績には分からないことが多く、出力エネルギーやパルス幅、冷却方法や治療間隔なども、いわば手探りの状態ながら、針脱毛に比べて痛くない、短期間に完了する脱毛治療として急速にシェアを伸ばし、数年のうちに針脱毛に取って代わっていきました。
「針脱毛」の世界では、エステで主流だった通常の電気針による電気分解法(通電による水の電気分解でアルカリを発生することにより細胞を変性させるので時間が数秒かかる)から、より安全で短時間の通電でも効果がある高周波による絶縁針脱毛(高周波による短時間の加熱で効率が良い)に移行するとともに、脱毛は「医療行為」であるという厚生省(現・厚生労働省)の通知をもとに「美容医療」が「エステ」が独占してきた「脱毛」という一千億円市場に参入しようとしている時期でした。
医師が機械を独占しているレーザー脱毛という新たな強敵の出現に、エステ業界はこぞって反発し、「レーザー脱毛は永久脱毛ではない」というキャンペーンを張りました。それに対し、レーザー脱毛が今後の脱毛治療の主流になると考えた医療側は「レーザー脱毛と電気針脱毛の効果は変わらない」と反発しました。(勝っているではなく変わらないとしたのは、当時の医学脱毛学会に属する医療機関は主に小林式絶縁針(医療機関専用で皮膚を火傷させないように絶縁コーティングされており、小林医師がロット番号を管理して、エステには販売されなかった)による針脱毛を主流としていたからです。)この過程で、では「永久脱毛」とは何か、という問題が浮上し、永久脱毛の再定義が行なわれるとともに、少なくとも医療としては、あやふやな「永久脱毛」という言葉を使わず、医療脱毛、医学脱毛と呼ぼう、という合意が形成されました。
1999年には、日本レーザー医学会と日本レーザー治療学会合同で「医療レーザー脱毛」に関する公開討論会が開かれました。(右はその時のパンフレットの表紙。当院の院長はこの時の討論会の事務局長でした)
この討論会で、少なくとも医療においては「脱毛」は「永久かどうか」にこだわるのではなく「人体に悪影響を及ぼさない」ものであるべきだという見地から、レーザー脱毛は「医療脱毛」であると宣言され(ということは医療者でないものがレーザー脱毛を行なうべきでないという意味も含みます)、脱毛用レーザー機器は医師が取り扱う医療機器であり、脱毛は医療行為であるという再確認がなされたのでした。
こうして、レーザーメーカーは医療機関でないもの(エステなど)にはレーザー脱毛機を売らないで貰いたい、という要求が医療界から出され、しばらくは「レーザー脱毛」は医療機関の独占となったのですが、その後レーザー類似機器(IPLやラジオ波を用いたりそれらを組み合わせた機器)が次々と開発され、最初は遠慮がちに高周波脱毛とか光脱毛などと宣伝していたエステ業界も、今では堂々とレーザー機器を用いて脱毛を行なうようになっています。
その背景には、美容医療機関が自己の傘下に「メディカルエステ」を抱え、医療機関が購入した機器をエステで使わせたり無資格者に脱毛させる、といった法的にどうかと思われる事例もあったようです。今でも「電気針やレーザーを用いた脱毛行為は医療行為であるから医師免許のないものが行なってはならない」という通知は生きているものの、実際にはエステなどで無資格者が行なっても逮捕起訴されるということはほとんどなくなっています。(やけどを負わせたりすれば警察が入るようですが)
一方で、永久脱毛という言葉はほとんど姿を消しました。これについてはエステ業界もほっとしていることでしょう。永久、という言葉が与えた誤解のせいで、永久保障を掲げ延々と無料治療を続ける羽目に陥っていたエステもあったのですが、最近ではほとんどの脱毛施設が回数制限や期間制限を設け、「生涯無毛を保障する」かのような宣伝をするところは滅多になくなりました。
レーザー脱毛が永久かどうかで争われていた当時、エステ業界ではワックスや除毛クリームなどを使って一時的に体毛を減少させる「一時脱毛」に対して、電気で毛根を破壊する方法を「永久脱毛」と呼びました。これはいわばキャッチフレーズであって、「永久」とは「一生涯」というような意味ではありませんでした。
もともと「永久脱毛」はアメリカのエステの団体である脱毛協会が定義したpermanent epilationという言葉を直訳したものです。permanentには文字通りの「永久」という意味もありますが、この場合は「長持ちする」「(数日で元に戻るような)一時的なものではない」という程度の意味だったでしょう。(美容関係でいえばpermanent wave「パーマ」は、ウェーブを長持ちさせる技術のことであって「永久巻毛」と訳さなかったのは賢明でした)
実際に「永久脱毛」の定義を見れば「脱毛施術を繰り返して脱毛が完了してから、1ヶ月後に生えてくる毛が施術前の20%以下であれば」permanentと言ってよいことになっていました。これは今でも「永久脱毛」の定義として用いられています。1ヶ月後に20%ですから、半年後に元に戻ったとしても「永久脱毛」はウソではないのです。
ところが「permanent」というキャッチフレーズを文字通り「永久」と考えた一部の人々は、実際とのギャップに苦しむことになっていったのです。パーマが1ヶ月でとれたからといって、美容院に返金を求めたりもう一度無料でかけさせたりするひとはまずいないでしょうが、「永久脱毛」の場合はそうしたトラブルが続発しました。かといって「うちの施術は永久ではない」と言ったとたんにお客さんは電話を切ってしまう。そこで、苦情を言う人には何年経っても無料で施術を続けるという、どちらにとっても面白くない状態が延々と続いていたのでした。
そこへレーザー脱毛の登場です。どちらかといえば高額で時間のかかるメディア、従ってある特定の人々しか相手にしていなかった「脱毛業界」にとって、短時間で広範囲の脱毛を、しかも比較的リーズナブルな料金で提供する「レーザー脱毛」は、脅威の新技術でした。針脱毛を主流とするエステ業界や、これから絶縁針の安全性を強調して市場に参入しシェアを広げたいと考えていた「医学脱毛」「医療脱毛」業界にとっては大変な競争相手でした。
そこで用いられたのが「レーザーは永久脱毛ではない」という宣伝でした。実際、上の項目でも書いたように、レーザー脱毛にはいろいろな条件設定が必要で、1本ずつ抜いて「ほら今日は520本抜けました」などという脱毛方法に比べ、どの程度効果があるのか見極めにくいものでした。しかも100年の歴史がある針脱毛に比べ数年の実績しかないわけですから「将来」についてはあくまで予測でしかなく、予測ですからなんとでもいえるわけです。
1回のレーザー脱毛ではその条件にあった一部の毛しか抜けません。その数ヶ月後の写真と「今生えている毛を全部抜いた」針脱毛の写真を比べれば、いかにも針の方が効果がありそうです。こうした宣伝を繰り返した結果、ますますエステ業界は、「永久脱毛」を売り物にしなければならない状況に追い込まれました。
レーザーの側でも対抗上「レーザー脱毛も永久脱毛である」ことを実証しようと様々な試みが行なわれましたが、所詮「永久脱毛」はどちらの場合も理念であり実際とはかけ離れたものでしたから、「永久」を「一生涯すべての毛穴で」と考える限り実現は不可能でした。レーザー側で「永久性を問題としない」「人体にとって、肌にとって害がない脱毛を目指す」と宣言したことで、「脱毛業界」全体が救われた面はあったのです。
もちろん今でも一般の方の中には「永久脱毛」を信じている方はたくさんいますし、一部のエステ関係者(これも言ってみれば医学的には素人集団ですが)は永久脱毛と言っていますが、最近では消費者の方も賢くなり、「また生えてきたから安いところに行ってくる」ような意識が主流となってきています。