フィラー注入治療
〜 Filler Injection 〜

イメージ写真

皮膚の深いしわや
小さなへこみの盛り上げには
ヒアルロン酸注入が効果を発揮します。

大江橋クリニックでは、ボディラインを変えたり
胸などのボリュームアップを図るために、大量のヒアルロン酸を注入する
方法はお勧めしていません。


フィラー注入治療とは

コラーゲン、ヒアルロン酸など皮膚組織に親和性のあるジェル状の軟組織注入剤を、注射器を用いて皮膚の一定の深さに注射することにより、皮膚の凹みを盛り上げたりシワを改善したりする治療法のことです。

大江橋クリニックで治療に用いている注入剤の一例(下の写真)

現在は主に下記の製品(ヒアルロン酸)を顔面の治療に使用しています。治療部位や治療目的によっては、同社製の別製品(ヒアルロン酸含有率などが異なるもの)を使用することがあります。以前治療した患者さんの中には他社製の同様な製品や別シリーズの製品を使用した方もいます。いずれも初回治療の際には開封前の製品をお示しして、説明後に患者さんの目のまえで開封しています。
同社製の製品を実際の治療に使用する際には現在のところ「施注資格」が製品ごとに必要となります。大江橋クリニックでは、過去の製品から現在まで、製品が改良・発売されるごとに資格を更新しています。
国内で販売される様になる以前は、輸入許可を得て厳密な温度管理のもとで個人輸入した同等品(スエーデンやオーストラリアなどで製造されたもの)を医師の責任で治療に使用していたことがあります。(現在は国内の医薬品卸業者からの納品。)使用前の製品は納品後温度管理された冷蔵庫内に保管されています。

イメージ写真:ジュビダーム

上記製品の使用説明書(添付文書)をご覧になりたい方は こちら。

※ コラーゲン注射は現在行なっていません。製品の安全性に懸念を生じたため一旦使用を中止しました。その後改良され再発売されましたが、現在はコラーゲンでなければ治療出来ない患者さんはあまりいないので、導入していません。
再開については検討中です。

医療広告ガイドラインによれば、保険外治療に用いる機器や薬剤は製品名や機種を明示してはいけないようです。「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布すること」にあたるようです。しかし、多種多様な製品が流通・使用されている中で、厚生労働省が認可した製品を用いていることを明示することは「適正な医療の機会を逸失する結果」とはむしろ逆で、「適正な医療の機会」を得るための貴重な情報であると考えます。もちろん大江橋クリニックで用いている製品以外にも適正な効能効果が得られると予想される他社製品はたくさんありますが、そうしたことは患者さんはよくご存じの事と思います。

治療の対象

眉間やほうれい線などのシワ、ニキビ跡などの小さな凹み、微妙な輪郭の補正などに用います。皮膚のやや深いところ(真皮内からその下)に注入して皮膚を盛り上げる治療なので、筋肉の動きで発生する大きな変形などは補正できません。また盛り上がった部位を凹ませることはできません。

治療の方法と流れ(予約まで)

まず診察を受けていただきます。お悩みについて問診票にご記入いただいています。できれば図解していただくと誤解を生じる可能性が減少します。(美容診察:自費 初診の場合は税込5,500円)

治療方法をご提案し、文書(説明書及び同意書)を用いて効果やリスク等を説明し、金額や日時などを決定します。通常は予約の際に予約料(税込2,200円)を別途いただいています。

治療費は、診察料、注入手技料、材料費に分かれています。診察料(美容指導料)は通常2,200円、手技料は11,000円、材料費はシリンジ1本あたり(内容1.0ml)88,000円となります。治療部位によりますが、通常1回の治療に用いるヒアルロン酸は一本程度(あるいはそれ以下)です。リスクのところにも書きますが、最大使用量については医学的な理由で制限があります。

治療方法をご提案し、文書(説明書及び同意書)を用いて効果やリスク等を説明し、金額や日時などを決定します。通常は予約の際に予約料(税込2,200円)を別途いただいています。

治療の方法と流れ(治療当日)

美容治療専用の待合室にご案内し、準備ができれば治療室にお入りいただきます。

治療は医師が直接行います(通常は院長)。リクライニングシートにお掛けいただき、治療前の写真を撮影します。

治療部位にペンでマークし、椅子を倒し、仰向けに寝た状態で注射を行います。部位ごとにシートを起こして効果を確認します。これを繰り返します。
治療に用いるヒアルロン酸は局所麻酔剤が含まれており、細い針を使用するため、最初の刺入には局所麻酔の注射と同じ様な痛みを伴いますが、徐々に痛みを感じにくくなります。ご希望があれば貼り付け麻酔剤(ペンレス)を治療部位に事前に貼ることもできますが、お勧めはしていません。塗る麻酔剤も通常は用いません。

麻酔の効果が出るまで時間がかかるので、その間に肌が湿潤してシワが目立たなくなってしまい、適切な治療ができない場合があるからです。また部位によって麻酔が注射する深さまで効きにくかったり、麻酔剤の血管拡張作用で出血したりする場合があります。微妙な修正の際には特に、最初の痛みを我慢していただく方が仕上がりがきれいになります。

治療の方法と流れ(治療後の過ごし方と効果の安定)

注射の治療なので、針穴からわずかな出血が見られたり、皮下出血が起こる場合があります。そうした場合も、パウダーを抑える程度の化粧は直後から可能です。クリームなどのファンデーションは、注入後2時間程度お待ちいただいてからお使いください。針穴に色の粉が入ると刺青の様な状態になり取れるのに時間を要することがあります。当日夜の入浴洗顔は可能です。こすりすぎたり長時間の入浴、サウナなどは避けてください。

注入物はジェル状の液体なので、安定するまでに強く抑えると皮膚の中で移動し、思った効果が出ない場合があります。2〜3日すると周囲の組織と注入分子が架橋して動きにくくなり、安定してきます。

ヒアルロン酸はコラーゲン(タンパク質の分子を水に分散したもの)ではなく油性のジェルなので、コラーゲンのように翌日水分が抜けて目減りすることがありません。コラーゲンの場合は目減りを考慮してややオーバーに補正しますが(平らよりやや盛り上げる)、ヒアルロン酸はむしろ保水性のために翌日にはボリュームが増えて注入時より盛り上がります。ですから控えめに、やや足りないぐらいにして治療を終える必要があります。

補正不足の場合は、後日(1〜2週間後)に追加注入を行って補正(タッチアップ)します。タッチアップには手技料や材料費はかかりませんが、診察料はいただいています。(自費美容指導料 2,200円)

リスクの項でも説明しますが、内出血が起こった場合はあまり触らず引くのをお待ちください。通常は2週間程度で色は消失します。
ただし、体質や出血量によっては長引くこともありますので、その際は診察を受けてご相談ください。改善方法があれば善処します。

一般的なリスク

注射なので当然ながら針を刺す痛み、注入物が皮下を押し広げる痛みが生じます。通常は一過性ですが、稀に長引くことがあります。

針穴から出血したり、皮下で内出血が広がることがあります。通常はしばらく圧迫することで止血し、止血すれば再出血は起こりにくいものです。

皮下で広がる方向を想定しながら注射するのですが、ニキビ跡のような瘢痕(傷跡)があったり、過去に注入を繰り返したりした場合、皮下組織の中に硬い瘢痕が不規則に残って散らばり、そこにはジェルが入らないため凸凹が解消しないことがあります。この場合はその場で無理に解消しようとせず、落ち着いてから再度補正したほうが自然に治ります。

注入量が多すぎると翌日以降に水分を吸収して膨らみ、想定以上に盛り上がることがあります。圧迫などで大抵は落ち着きますが、稀にヒアルロン酸分解酵素などの注射で注入物を溶かす必要が出ることがあります。溶かすと注入物は消失するので再度注入し直す必要があります。

針先の角度などの影響で左右差が生じることがあります。左右差の修正目的の場合、完全に対称にならないことがあります。

ボリュームを出すために1箇所に過大に注入すると、ジェルが組織内に分散せず塊となり、透明感のある深い水疱の様に見えることがあります。分解するかある程度の期間落ち着くのを待つ必要があります。

予測ができないが稀に起こってしまうリスク

眉間など皮下の血管が網の目でなく放射状に広がる場所では、血管内注入や血管周囲への多めの注入で、注入部位より先の血管が詰まったり押しつぶされて血流が途絶し、その血管が栄養を担当している部分の皮膚が酸素不足になることがあります。
皮膚が蒼白になり、場合により壊死して穴が開くことがあります。早めに気づいて適切な処置を行うことである程度回復できますが、壊死した場合黒く穴が空いて傷跡が残ることがあります。回復には半年以上かかり、場合により手術的な修復が必要になったりします。

眉間の場合は経験的に一定の割合で事故が発生し、事前には予測できないとされています。(大江橋クリニックでも経験があります。ほとんどの場合軽度で跡を残さず回復しています。
十分な注意を払っても避けられないため、眉間への注射は注入量などが他の部位より少なく制限されています。

注入部位のアレルギー反応などによるトラブルが稀に起こります。ニキビや水疱、痂皮(瘡蓋)、腫れ、痒み、痺れや炎症反応、蕁麻疹、肉芽種、毛細血管拡張、赤みがひかないなど。それぞれわずかながら報告されています。重症筋無力症などの引き金になる場合もあり得ます。注入に関連してヘルペスが発症することがあります。注射部位に感染が起こることがあります。

注入部位がかなり期間が経ってから(数年以上たって)赤く腫れてくることがあります。
おそらく異物によるアレルギー反応と思われます。何回か注入を行ったああとに感作が成立すると、何年も前に注入した部位までも赤く腫れることがあります。追加注入に限らず、レーザーや手術などの侵襲の後に腫れてくることもあります。いずれも、適切なアレルギー治療などで軽快することが多いですが、場合によって治療に長期間を要したり、あるいは一旦軽快しても何かのきっかけで再発する場合があります。

ほとんど起こらないが注意すべきとされている重大なリスク

不純物として含まれている微量のタンパク質や添加されている麻酔薬などによって、ショックを起こし、ごく稀には呼吸困難などで死亡することもあります。みなさんよくご存じのアナフィラキシーと言います。これはほとんどあらゆる薬剤で起こる可能性があり予測困難です。麻酔の関連では悪性高熱で死亡する場合もあります。
脳卒中や心停止、失明も報告されています。血管内に誤って入ったものと推定されますが、原因不明のこともあります。血管攣縮や出血なども関連するかもしれません。膠原病や自己免疫疾患も有害事象として報告されています。これらは通常滅多に起こりませんが、絶対に起こらないと言い切れないものです。
リスクの全くない治療は存在しません。基本的には安心してお受けいただいて大丈夫だと思います。

フィラー注入によるしわの治療

浅いシワ、目の周りなどの皮膚の薄い場所には、レーザーの方が向いています。
やや皮膚の硬い部分や、ある程度ボリュームが必要なへこみの盛り上げには、ヒアルロン酸が効果を発揮します。当院ではシワの直下に注射して皮膚を硬くするよりは3次元的な立体感の復元を優先する方が効果的と考えています。

イメージ写真:新緑

いずれも深く刻まれて指で皮膚を引っ張っても消えないものは、一度に解消することは難しく、浅くなっても線は残ります。無理に大量注入すると、シワの原因となっている毛穴から漏れ出してきてしまいます。こうした場合はしばらく期間を開けて、何度か追加することにより徐々に浅くしていきます。
ただし、深い眉間の縦皺はフィラー単独では消すことが難しく、くっきりしているものは手術でシワ自体を切除して平らに縫う方が目立たないことがあります。

法令線は人により凹みの程度が様々ですが、もともと誰にでもある生理的な凹みなので全くなくなるような大量注入はむしろ不自然です。
左右差や角度の方が気になるという方も多く、様子を見ながら少しずつ改善することでご満足いただけることがあります。

口角が下がったように見える凹みは実は口角を引き上げる筋肉の付着部の凹みなので、凹んだ部分だけに注入してもなかなか改善しません。口角自体をやや硬く板状に膨らませることで改善を図ります。

マリオネットラインと言われる顎にかけての凹みは、改善するためにはやや多い量が必要で、一度に解消しようとする場合通常1本(1ml)では難しいことがあります。しかし、無理せず様子を見ながら期間を開けて追加していくことで、徐々に目立たなくなるような注入法を選ぶこともできます。

フィラー注入によるボリュームアップ

目の下のいわゆるクマの中には、眼輪筋の衰えによるシワや凹みで目の下が黒く見えるものも含まれています。軽度のものはいわゆる眼輪筋の筋トレが効果的です。
目の縁の眼輪筋の衰えは涙袋の消失として現れてきます。本格的にはたるみ取り手術の一環として眼輪筋を引き上げる手術が効果的ですが、ダウンタイムも長く費用もかかります。
このような場合、涙袋の部分をフイラーでボリュームアップすると手軽に即効性のある改善ができるため、タレントをはじめ多くの人がこうした治療を受けています。

唇は年齢と共にボリュームが減り、特にリップラインの縁(ホワイトロール)がはっきりしなくなって、口紅が滲んだりすることもあります。
このような場合、縁に沿って鋭角的に唇を盛り上げ、ホワイトロールを強調すると弾力のある瑞々しい感じが出せます。

目と目の間の鼻筋を少しボリュームアップすると、鼻筋が通った印象だけでなく、皮膚が少し引っ張られて蒙古襞が減少し、目頭切開したような効果を出すことができます。

年齢で少し鼻に横じわが入ったり、眉間が少し痩せたりした場合、眉の間を少し盛り上げて若さを出したり、上でも述べた眉間の縦皺を減少させたりできます。

フィラー注入による凹みの治療

特にご要望が多いのはにきび痕の凹みです。ただしにきび痕は毛穴の周囲が深く凹んでクレーター状になっているばかりではなく、場所によっては皮膚の奥で毛穴が複数繋がりあって洞窟状になっていたり、深くまで癒着して盛り上げに抵抗する場合もあり、簡単にはいきません。

クレーター状のにきび痕などは小さくくり抜いてしまった方がきれいになることがあります。浅く盆状に凹んだ傷などが良い適応で、縫合の際段違いになって治ったような傷は、基本的には縫い直しの方が結果は良いようです。

大きな水疱瘡の痕など直径も凹みも大きいものは、手術で切り取ってしまった方がきれいになります。なだらかな凹みでなく、凹み際が鋭く落ち窪んでいる、いわゆるクレーター型の傷は注入だけではうまく平らにならず、辺縁がドーナツ型に盛り上がる場合もあります。
そうした場合は、今度は盛り上がった場所をレーザーで削り取るなどの治療が必要となり、思ったより治るまでに時間もかかり周辺まで広い傷になることがあります。

小さく浅い凹みの場合、注入量は0.1mlほどで済むため、費用がもったいない気もしますが、手術することを考えると注射だけで済む方が楽ですし、余った液を気になる法令線に、などという使い方もできます。

美容手術、形成外科手術などを受けて、手術あとが大部分は目立たなくなったものの、一部に凹みが残ってしまうことがあります。ホクロを取ったあと、ピアス穴を閉じたあとなどが代表的です。
再手術するほどの大きさではなく、ほんの少し凹みが盛り上がってくれたら、という場合に、フィラーで修正できることがあります。

0.1mlほどで済むため、費用がもったいない気もしますが、再手術の負担を考えると注射だけで済む方が楽ですし、余った液を気になる法令線に、などという使い方もできます。